110A27

64歳の女性。右腰痛を主訴に来院した。2、3か月前から階段歩行特に動悸を自覚するようになった。今朝、特に誘因なく突然に右腰痛を自覚し、持続するため受診した。症状は体動で変化しない。来院時、意識は清明。体温36.7℃。脈拍 92/分、不整。血圧138/84mmHg。呼吸数16/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心尖部を最強点とする拡張期ランブルを聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。右肋骨脊柱角に軽度の叩打痛を認める。血液所見:赤血球413万、Hb 11.8g/dL、Ht 35%、白血球11,300、血小板21万、PT-INR 1.0(基準0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白6.0g/dL、アルブミン3.5g/dL、総ビリルビン0.4mg/dL、AST 17U/L、ALT 23U/L、LD 855U/L(基準176〜353)、ALP 170U/L(基準115〜359)、CK 42U/L(基準30〜140)、尿素窒素11mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、尿酸4.3mg/dL、血糖98mg/dL、Na 140mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 107mEq/L。CRP 1.0mg/dL。心電図(A)、胸部エックス線写真(B)及び腹部造影CT(C)を別に示す。
まず行うべき治療はどれか。
緊急開心術
抗凝固療法
電気的除細動
ジゴキシン投与
冠動脈インターベンション

解答: b

110A27の解説

心尖部を最強点とする拡張期ランブルであり、僧帽弁狭窄症〈MS〉がある。画像AではMSに端を発したと思われる心房細動〈AF〉がある(脈拍が不整であることも矛盾しない)。画像Bでは軽度の心拡大と、左第2, 3弓の突出をみる。画像Cでは右腎梗塞が指摘可能。主訴の右腰痛はこのためである。AFにより生じた血栓が腎梗塞をきたした症例。
a・e 心臓自体に着目した対応であり、無効。
b 正しい。さらなる血栓症を予防すべく、まずは抗凝固療法を行いたい。
c AFに有効なのはカルディオバージョン。電気的除細動は心室細動〈VF〉や無脈性心室頻拍〈VT〉といった致死的不整脈に用いる。用語の定義の問題もあるかもしれないが、いずれにせよまず行うべきものではない。
d レートコントロールに有効ではあるも、まず行うべきものではない。

正答率:89%

テーマ:心房細動〈AF〉による腎梗塞

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