105E63

次の文を読み、63~65の問いに答えよ。
58歳の男性。呼吸困難を主訴に来院した。
現病歴:2年6か月前から転倒しやすくなったため、自宅近くの診療所を受診し、右下肢の筋力低下を指摘された。上肢の筋力低下も出現し、2年前に総合病院の神経内科で筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉の診断を受けた。介護保険サービスを利用しながら在宅療養していたが、半年前から球麻痺症状が出現し、徐々に発声量が低下した。2、3日前から微熱と鼻汁とがあり、喀痰の量が増加し、喀痰排出が困難となって、呼吸困難が出現した。
既往歴:特記すべきことはない。
生活歴:管理職であったが、発症後退職した。専業主婦の妻との2人暮らし。子どもは2人いるが、それぞれ独立している。
現 症:意識は清明。身長172cm、体重54kg。体温37.2℃。脈拍72/分、整。血圧112/78mmHg。経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉88%。咽頭に軽度発赤を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。胸郭の動きは不良である。腹部所見に異常を認めない。直腸指診で前立腺に肥大を認めない。構音障害は強いが、かろうじて単語レベルでのコミュニケーションが可能である。下肢の筋萎縮が著しく、筋力低下のため歩行困難で常時車椅子を使用している。排泄、入浴は全介助である。上肢の筋力は著しく低下し、食事は全介助で、水分摂取にはとろみを要する。
検査所見:血液所見:赤血球386万、Hb 11.4g/dL、Ht 38%、白血球9,200、血小板24万。血液生化学所見:血糖96mg/dL、総蛋白6.0g/dL、アルブミン3.2g/dL、尿素窒素14mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、AST 38U/L、ALT30 U/L、LD 204U/L(基準176~353)、Na 136mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 98mEq/L。CRP 1.0mg/dL。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH 7.38、PaCO2 50Torr、PaO2 55Torr、HCO3- 30mEq/L。心電図と胸部エックス線写真とに異常を認めない。
その後の経過:頻回の喀痰吸引でSpO2は93%まで改善し、その後解熱し呼吸困難も消失した。本人と家族は在宅療養の継続を強く希望しており、その準備のためのカンファレンスを開催することになった。
カンファレンスへの参加が必要ないのは誰か。
訪問看護師
成年後見人
神経内科医
ケアマネジャー
在宅診療の担当医

解答: b

105E63の解説

筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉にて介護保険サービスを利用しながら在宅療養していたが、呼吸困難が出現してきた58歳の男性である。頻回の喀痰吸引にて呼吸困難は消失した。本人と家族は在宅療養の継続を強く希望しており、その準備のためのカンファレンスを開催することになった。
a 嚥下評価や喀痰吸引など、今後訪問看護が必要となるため参加すべきである。
b 誤り。成年後見制度とは、知的障害や精神障害、認知症などの精神上の障害により判断能力が十分でない人が不利益を被らないように家庭裁判所に申立て、援助してくれる人を付けてもらう制度である。本例では意思の疎通は可能であり、後見人は必要ない。
c ALSの病態について説明ができ、本患者を把握している神経内科医も参加する必要がある。
d 今後のケア計画を作成するうえで、ケアマネジャーも参加することが望ましい。
e 在宅診療へ移行するにあたり、その担当医は当然参加することになる。

正答率:91%

テーマ:【長文1/3】筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉末期患者の在宅療法指導

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