104G53

65歳の男性。悪心、下腿浮腫および労作時呼吸困難を主訴に来院した。10年前の健康診断で、蛋白尿と高血圧とを指摘されたが放置していた。1か月前から呼吸困難が徐々に出現し、体重が3kg増加した。血圧178/96 mmHg。下腿に圧痕浮腫を認める。血液所見:赤血球230万、Hb 6.8g/dL、Ht 21%、白血球6,000、血小板23万。血液生化学所見:血糖180mg/dL、尿素窒素98mg/dL、クレアチニン9.1mg/dL、Na 121mEq/L、K 8.2mEq/L、Cl 85mEq/L、Ca 8.1mg/dL、P 6.6mg/dL。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH 7.32、PaO2 98Torr、PaCO2 29Torr、HCO3- 15mEq/L。胸部エックス線写真(A)と心電図(B)とを別に示す。
緊急血液透析の準備中にまず行う治療はどれか。
濃厚赤血球輸血
20% NaClの静注
ベラパミルの持続静注
グルコン酸Caの静注
速効型インスリンの皮下注射

解答: d

104G53の解説

10年前からの蛋白尿と高血圧とが増悪し、悪心、下腿浮腫および労作時呼吸困難を伴っている高齢男性である。178/96mmHgと高血圧を認め、蛋白尿と血糖180mg/dlから糖尿病も考える。血液所見により貧血を認め、浮腫の存在や、クレアチニン9.1mg/dl、K 8.2mEq/lと高値であることより慢性腎不全の診断である。Aでは心陰影の拡大や血管陰影の増大がみられうっ血性心不全を、Bではテント状T波を認め高カリウム血症を示唆する。
a 循環血液量を増加させ肺うっ血を悪化させるだけでなく、溶血により高カリウム血症が増悪する危険性もあるので禁忌。
b たしかに低ナトリウム血症であるが、これは腎機能低下により水の貯留が亢進して希釈されたからであり、NaClの静注ではむしろうっ血性心不全を悪化させてしまうので禁忌。
c 高カリウム血症による不整脈にベラパミルは無効である。
d 正しい。高カリウム血症の補正のためにまず行うべき治療である。
e グルコースとともに点滴静注すれば、細胞内へのカリウム移動を促進するために有効である。

正答率:82%

テーマ:高カリウム血症の初期治療

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