103D31

58歳の男性。肝腫瘍の精査のため来院した。12年前に慢性C型肝炎と診断されたが放置していた。心窩部痛のため近医を受診し、腹部超音波検査で肝腫瘍を指摘された。意識は清明。身長174 cm、体重66kg。脈拍72/分、整。血圧120/70mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球486万、白血球5,600、血小板18万。血液生化学所見:アルブミン4.8g/dL、クレアチニン0.8mg/dL、総コレステロール192mg/dL、総ビリルビン1.0mg/dL、直接ビリルビン0.6mg/dL、AST 42U/L、ALT 58U/L、ALP 220U/L(基準115~359)。免疫学所見:HCV抗体陽性、AFP 1,200ng/mL(基準20以下)。ICG試験(15分値)8.6%(基準10以下)。腹部超音波写真を別に示す。この他に肝腫瘍を認めない。
治療として最も適切なのはどれか。
放射線治療
肝動脈化学塞栓療法
経皮的エタノール注入療法
肝切除術
肝移植

解答: d

103D31の解説

腹部超音波検査でモザイクパターンを有しており、単発の肝細胞癌(腫瘍径は3cmを超えている)が疑われる。
 ・脳症:なし(1点)
 ・腹水:なし(1点)
 ・血清総ビリルビン値:1.0mg/dL(1点)
 ・血清アルブミン値:4.8g/dL(1点)
 ・プロトロンビン時間〈PT〉:記載なし
以上より、PTが1〜3点のどれをとったとしても、Child-Pugh分類は5〜7点となり、A or Bとなる。
a 重粒子線治療などがあるが肝細胞癌は放射線感受性は低く放射線治療は一般的ではない。
b △。厳密な議論をすればガイドライン上は肝動脈化学塞栓療法〈TACE〉も適応となりうる。が、状態がよさそうであり単発腫瘍ということも踏まえdに正答を譲る。
c 直径が3cmを超えた肝細胞癌には適応とならない。
d 正しい。肝切除により取りきることが可能と判断する。
e Child-Pugh分類Cの場合に考慮される。

正答率:75%

テーマ:肝細胞癌〈HCC〉の治療

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