111I78

34歳の男性。大動脈解離の定期受診のため来院した。2年前に胸部下行大動脈解離を指摘され、以後、自宅近くの診療所で降圧薬の投与を受けている。自覚症状は特にない。父親は30歳台で大動脈疾患で死亡した。喫煙歴と飲酒歴はない。身長179cm、体重50kg。体温36.7℃。脈拍72/分、整。血圧104/36mmHg。呼吸数16/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。胸骨左縁第3肋間を最強点とするIV/VIの拡張期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢が長く、クモ状指趾を認める。四肢末梢の動脈拍動に差を認めない。水晶体偏位を認める。胸部造影CT(A〜D)と心エコー図(E)とを別に示す。

この患者について正しいのはどれか。2つ選べ

常染色体劣性遺伝である。
大量の心嚢液貯留を認める。
StanfordA型大動脈解離である。
大動脈弁尖に著明な石灰化を認める。
大動脈弁置換術および人工血管置換術の適応である。

解答: c,e

111I78の解説

大動脈解離罹患後の定期フォローに来院した34歳男性。若年発症の家族歴があり、長い四肢、クモ状指趾、水晶体偏位と特徴的な身体からMarfan症候群とわかる。Aでは大動脈弓部に解離所見を認める。B、Cでは上行大動脈の拡大と解離所見を認める。背側にある下行大動脈と比較すれば明らかに拡大していることがわかる。DではValsalva洞の拡大を認める。E(左:通常のエコー)では大動脈基部の拡大が観察できる。大動脈径は通常左房と同等であるが、左室と同程度の大きさまで拡大している。E(右:カラードプラ―)では逆流ジェットを認めることから大動脈弁閉鎖不全症〈AR〉が指摘できる。以上よりStanford A型大動脈解離と、大動脈弁輪拡張症〈AAE〉、そしてARの診断となる。解離があるも、自覚症状は特にないため、慢性大動脈解離と呼ぶ。
a 常染色体優性遺伝〈AD〉である。
b 心嚢液貯留は画像上、指摘できない。
c 正しい。上記の通り。
d 大動脈弁尖の石灰化は画像上、指摘できない。
e 正しい。大動脈解離とAAE、ARに対し、Bentall術(大動脈弁置換術+上行大動脈人工血管置換術+冠動脈基部再建)を行う。

正答率:92%

テーマ:Marfan症候群にみられた大動脈解離について

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