111G63

次の文を読み、63〜65の問いに答えよ。

84歳の女性。失神と眼前暗黒感とを主訴に来院した。

現病歴:1週間前から時々気が遠くなるようなふらつきを自覚していたが、本日、朝食前に突然眼前暗黒感を自覚し意識が消失した。意識はすぐに回復したが、心配になり長女に付き添われて救急外来を受診した。

既往歴:60歳ごろから高血圧症と脂質異常症。75歳ごろから骨粗鬆症と逆流性食道炎。80歳ごろから心不全と心房細動で内服治療中。アンジオテンシンII受容体拮抗薬、スタチン〈HMG-CoA還元酵素阻害薬〉、ビスホスホネート製剤、プロトンポンプ阻害薬およびジゴキシンを処方されている。

生活歴:ADLは自立している。長女夫婦と3人暮らし。喫煙歴と飲酒歴はない。

家族歴:父親が心筋梗塞で死亡。母親が胃癌で死亡。

現 症:意識は清明。身長150cm、体重42kg。体温35.8℃。脈拍36/分、不整。血圧152/70mmHg。呼吸数20/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心尖部を最強点とするII/VIの汎収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。神経学的所見に異常を認めない。

検査所見:尿所見:蛋白(±)、糖(−)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球352万、Hb 11.8g/dL、Ht 36%、白血球5,800、血小板16万。血液生化学所見:総蛋白6.8g/dL、アルブミン3.9g/dL、AST 28U/L、ALT 32U/L、ALP 164U/L(基準115〜359)、CK 45U/L(基準30〜140)、尿素窒素24mg/dL、クレアチニン1.4mg/dL、血糖110mg/dL、HbA1c 5.7%(基準4.6〜6.2)、Na 133mEq/L、K 3.6mEq/L、Cl 97mEq/L。CRP 0.3mg/dL。

まず行うべきなのはどれか。

脳波
心電図
頭部MRI
胸部造影CT
ヘッドアップテイルト試験

解答: b

111G63の解説

「高齢者とクスリ」の3連問、という典型出題パターン。さて、本症例の原因となっている薬剤はどれだろうか。現在服用しているのは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬〈ARB〉(→高K血症と低血圧)、スタチン(→横紋筋融解症)、ビスオスホネート(→顎骨壊死や食道潰瘍)、プロトンポンプ阻害薬〈PPI〉(→非常に多彩だが重篤な副作用は稀)、ジゴキシン(→徐脈[房室ブロックなど]や期外収縮)である(カッコの中が代表的な副作用)。脈拍が不整で徐脈となっていることから、ジゴキシンが原因として最も考えやすい。クレアチニンが上昇しており、腎障害が進行している。これにより薬物排泄能が低下し、ジギタリス中毒を呈したのであろう。心尖部を最強点とする汎収縮期雑音が聴取されているのは僧帽弁閉鎖不全症〈MR〉が存在するからかもしれないし、貧血(本症例ではそこまで高度ではないようだが)の代償かもしれない。
a・c 神経学的所見に異常を認めておらず、これらは必要ない。
b 正しい。徐脈のほか、期外収縮やST変化がみられる可能性が高い。
d 肺や大血管、心臓のマクロな異常は考えにくいため、胸部造影CTは必要ない。
e 「起立時にふらつく」といった記載がないため、起立性低血圧は否定的。

※参考画像として、80D12の心電図(ジギタリス中毒)を抜粋しておく。徐脈、期外収縮、ST変化を目に焼き付けておこう。
画像解説

正答率:90%

テーマ:【長文1/3】ジギタリス中毒でまず行う検査

フォーラムへ投稿

関連トピック