111G58

75歳の女性。交通外傷による肝損傷の緊急手術後で2日前からICUに入院中である。術前、術中に一時的に大量の輸液と輸血が行われた。術後はICUに入室して人工呼吸管理を受けていたが、気管からピンク色泡沫状の分泌物が吸引されるようになった。心拍数110/分、整。血圧112/64mmHg。中心静脈圧16mmHg。頸静脈の怒張を認め、両側の胸部にcoarse cracklesを聴取する。動脈血ガス分析(FIO2 0.6):pH 7.35、PaCO2 40Torr、PaO2 70Torr、HCO3- 23mEq/L。胸部エックス線写真で心胸郭比75%、両肺野に浸潤影を認める。心エコーで左室駆出率35%。

この時点で考えるべき治療薬はどれか。2つ選べ

ドブタミン
フロセミド
ジルチアゼム
ノルアドレナリン
プロプラノロール

解答: a,b

111G58の解説

術後に「ピンク色泡沫状の分泌物」が気管からみられていることから、肺水腫の出現を考える。この時点で考えるべきは2つだ。1つは緊急手術の術前、術中に大量の輸液と輸血とが行われたためうっ血による急性左心不全を呈したシナリオ。もう1つは手術のストレスにより出現した急性呼吸窮迫症候群〈ARDS〉。本文末尾で心エコー所見が示されており、左室駆出率が低下していることから非心原性肺水腫であるARDSは却下し、急性左心不全と考えられる。
a 正しい。左室駆出率が低下しているため、ドブタミンにより心収縮力の上昇を図る。
b 正しい。うっ血に対し、ループ利尿薬であるフロセミドを用いる。
c カルシウム拮抗薬である。心収縮をさらに低下させるため、危険である。
d α作用の強いカテコラミンである。血管抵抗を上昇させ、左室の後負荷が上昇してしまうため、危険である。
e β遮断薬である。心収縮力を低下させるため、禁忌である。

正答率:62%

テーマ:大量の輸液・輸血後に発生した肺水腫の治療薬

フォーラムへ投稿

関連トピック