111F30

次の文を読み、30、31の問いに答えよ。

61歳の男性。ふらつきを主訴に来院した。

現病歴:1週間前から立ち上がるときにふらつきがあった。意識が薄らぐように感じるが消失することはない。悪心、胸痛、呼吸困難、動悸、頭痛、耳鳴り及び難聴はない。この数日ふらつきがひどくなっていることに加え、2日前から便が黒色になっているため、心配して受診した。

既往歴:42歳から脂質異常症。55歳時に心筋梗塞。スタチン〈HMG-CoA還元酵素阻害薬〉とアスピリンを処方されている。

生活歴:喫煙は55歳まで40本/日を35年間。飲酒歴はない。保険会社の支店長で仕事量は多いが人間関係は良好である。運動をする時間はないという。

家族歴:独身。父親は心筋梗塞で死亡。母親は健康である。妹が脂質異常症。

現 症:意識は清明。身長175cm、体重82kg。体温36.8℃。仰臥位脈拍80/分、立位脈拍88/分、整。仰臥位血圧146/86mmHg、立位血圧122/80mmHg。呼吸数20/分。SpO2 98%(room air)。皮膚は正常。眼瞼結膜は貧血様だが、眼球結膜に黄染を認めない。口腔内は湿潤している。頸静脈の怒張を認めない。頸部血管雑音を聴取しない。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。眼振を認めない。指鼻試験陰性、Romberg徴候陰性。四肢の筋力に異常を認めない。腱反射は正常。

この患者に有用でない検査はどれか。

心電図
直腸指診
血液検査
温度眼振検査
上部消化管内視鏡検査

解答: d

111F30の解説

ふらつきを主訴に来院した61歳男性。心筋梗塞のためアスピリンを内服しており、2日前から黒色便を認めていることからアスピリン潰瘍による上部消化管出血が疑われる。
a ふらつきの症状が心原性でないことを確認せよ、という意図なのか。はたまた、ルーチン検査として(モニター心電図含め)心電図は普通やるだろ、という意図なのか。黒色便という強烈なキーワードがある本患者で心電図を積極的に選択肢に打ち出す意図はよくわからないが、少なくともdよりは有用性が高いと思われる。
b 黒色便の有無を確認する。
c 赤血球数やヘモグロビン値、BUN/Cr比などを確認する。万が一の時のため、血液型と交差血とを採取しすぐに輸血ができるように準備しておくとスマート。
d 誤り。貧血に伴うふらつきをまず考えているため眼振検査は不要である。温度眼振検査は耳鼻科外来で行うもので、一般の外来では実施困難。緊急時に行う検査ではない。
e 上部消化管内視鏡検査にて潰瘍の有無、出血の有無を確認する。

正答率:90%

テーマ:【長文1/2】上部消化管出血が疑われる患者への検査

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