111F24

78歳の男性。呼吸困難を主訴に夜間救急外来を受診した。呼吸困難のために病歴は十分に得ることができない。家族の話によると、5年前から自宅近くの診療所で在宅酸素療法が導入されており、1L/分の酸素を吸入している。来院時は、酸素ボンベを持参している。意識は清明。体温36.8℃。脈拍96/分、整。血圧130/80mmHg。呼吸数20/分。体格はやせ型。吸気時に肥大した胸鎖乳突筋が特に目立ち、口すぼめ呼吸をし、喘鳴が著明である。動脈血ガス分析(鼻カニューラ1L/分酸素投与下):pH 7.35、PaCO2 55Torr、PaO2 60Torr、HCO3- 30mEq/L。

酸素療法による適切な初期対応はどれか。

リザーバー付マスク10L/分
リザーバー付マスク5L/分
鼻カニューラ5L/分
鼻カニューラ1.5L/分
鼻カニューラ0.5L/分

解答: d

111F24の解説

呼吸困難を主訴に来院した78歳男性。1L/分の在宅酸素療法を導入していること、やせ型で口すぼめ呼吸をしていることから背景にはCOPDがあるのであろう。血液ガス分析ではPaO2の低下とPaCO2がやや上昇しているため、CO2ナルコーシスに注意する。
a〜c COPD等、慢性II型呼吸不全の患者に高濃度の酸素を投与するとCO2ナルコーシスになる可能性があるため、初期対応では禁忌。ちなみにcの鼻カニューラで5L/分以上の酸素量を投与すると酸素流速が早すぎて鼻が痛くなるので高流量時にはマスクを使用したい。
d 正しい。COPDが背景にある患者は低酸素に慣れていることも多く、呼吸苦がとれる最低限の量を投与すればよい。まずは普段の投与量に0.5~1L/分追加し、それでも呼吸苦が改善しなければナルコーシスに注意しながら増量するか、NIPPVを検討する。
e 酸素を下げては呼吸状態がさらに悪化する。禁忌。
※割れ問。98C28で「経鼻酸素5L/分を開始し、静脈路を確保して利尿薬を投与した。30分後に意識レベルが低下してきた」(つまりCO2ナルコーシスになってしまった)という問題があり、参考になる。

正答率:45%

テーマ:慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉急性増悪への酸素投与方法・投与量

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