111F20

75歳の男性。呼吸困難と起坐呼吸とを主訴に来院した。3年前から高血圧症、弁膜症および脂質異常症で自宅近くの医療機関を定期受診していた。1週間前から咽頭痛および発熱の症状があり、その後、階段昇降時に息切れを自覚し、徐々に起坐呼吸の状態となった。意識は清明。体温37.2℃。脈拍100/分、整。血圧138/86mmHg。呼吸数24/分。SpO2 88%(room air)。頸静脈の怒張と両下腿の浮腫とを認める。胸部の聴診でIII音とIV音とを聴取し、心尖部を最強点とするIV/VIの全収縮期雑音を聴取する。呼吸音は両側の下胸部にcoarse cracklesを聴取する。四肢末梢に冷感を認めない。心電図は洞性頻脈を認めるが、有意なST-T変化を認めない。胸部エックス線写真を別に示す。酸素投与を開始し、静脈路の確保と心電図モニターの装着とを行った。

硝酸薬とともに投与すべきなのはどれか。

鎮静薬
利尿薬
β遮断薬
α遮断薬
経口強心薬

解答: b

111F20の解説

呼吸困難と起座呼吸を主訴に来院した75歳男性。低酸素血症と下腿浮腫、III音、IV音を聴取し、胸部エックス線にて心拡大と両側胸水貯留を認めることから急性心不全の診断となる。高血圧症、弁膜症の指摘があり、感冒症状の後に労作時の息切れを認めた経過からは感冒契機の急性心不全と考える。
a 特にせん妄となっている記載もなく、もともとADLの自立した75歳であるから安静を指示すればよい。不用意に鎮静薬を用いることはしてはいけない。また、鎮静薬が過剰になると呼吸抑制の可能性や、自覚症状の訴えも少なくなってしまいかえって危険である。
b 正しい。下腿浮腫と両側胸水貯留を認めるため利尿剤を使用してうっ血の解除を試みる。
c 脈拍の上昇は心拍出量低下のための代償機構である。その状態下でβ遮断薬を用いては血行動態が破綻し、心不全の増悪を来すため禁忌である。確かに慢性心不全に対しては予後を改善させる報告があるが、導入は心不全改善後に行う。
d α遮断薬には降圧作用があるも、急性心不全に対して第一選択としては用いられない。
e 心電図にてST-T変化はなく、血圧も保たれていることから、著しい心機能低下はないと予想する。まずは利尿剤で反応をみて、それでも改善が乏しい場合に強心薬の経静脈投与を検討する。腸管血流のうっ滞も予想され、経口では効果発現に乏しいのも誤りである理由の一つ。

正答率:93%

テーマ:急性心不全で硝酸薬とともに投与すべき薬剤

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