111D52

61歳の男性。腹部膨満感と体重増加とを主訴に来院した。2週間前から腹部の膨満感が出現し体重が8kg増加した。これまでに心疾患を指摘されたことはない。意識は清明。身長160cm、体重69kg。体温36.5℃。脈拍60/分、整。血圧124/62mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は膨隆し波動を認める。圧痛を認めない。下腿に中等度の浮腫を認める。尿所見:蛋白(−)、糖(−)、潜血(—)。血液所見:赤血球348万、Hb 11.1g/dL、Ht 34%、白血球3,500、血小板7.0万、PT-INR 2.0(基準0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白6.2g/dL、アルブミン2.7g/dL、総ビリルビン1.3mg/dL、直接ビリルビン0.6mg/dL、AST 31U/L、ALT 26U/L、γ-GTP 51U/L(基準8〜50)、アンモニア28μg/dL(基準18〜48)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 101mEq/L。胸部エックス線写真と心電図とに異常を認めない。

適切な治療はどれか。2つ選べ

塩分制限
蛋白制限
利尿薬内服
ラクツロース内服
副腎皮質ステロイド内服

解答: a,c

111D52の解説

高齢男性の急激な腹水貯留と低アルブミン血症、汎血球減少。肝硬変を考える。
a 正しい。主訴は腹部膨満感と体重増加であるため、水分貯留に対して対処したい。塩分制限はその一手である。
b 蛋白はアンモニアの原料となる。ゆえにアンモニア高値の症例では有効だが、本患者では基準値内にあるため不適切。
c 正しい。利尿薬により除水を狙う。
d 下剤である。腹水貯留により便秘を呈しているケースで有効だが、そのような記載は今ない。また、便秘により便からの蛋白吸収が増加し、アンモニア高値となることを防止するための対応であるため、アンモニアが基準値内にある本症例には効果が乏しい。
e 自己免疫性肝炎〈AIH〉など免疫学的機序の強い肝障害に有効。

正答率:43%

テーマ:肝硬変〈LC〉の治療

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