111D48

78歳の男性。腹痛のため救急車で搬入された。1年前から便秘傾向であったが特に医療機関を受診していなかった。最近になって便秘がひどくなり、昨晩、就寝前に下剤を服用した。今朝、排便時に突然、強い腹痛が生じたため救急車を要請した。意識は清明。身長172cm、体重64kg。体温38.4℃。心拍数120/分、整。血圧160/92mmHg。呼吸数28/分。表情は苦悶様で屈曲側臥位である。眼瞼結膜は貧血様である。眼球結膜に黄染を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は板状硬で強い圧痛を認める。表在リンパ節を触知しない。血液所見:赤血球320万、Hb 10.7g/dL、Ht 30%、白血球15,300、血小板18万。血液生化学所見:総蛋白6.6g/dL、アルブミン3.4g/dL、総ビリルビン0.6mg/dL、AST 50U/L、ALT 62U/L、LD 330U/L(基準176〜353)、ALP 270U/L(基準115〜359)、γ-GTP 63U/L(基準8〜50)、アミラーゼ140U/L(基準37〜160)、CK 110U/L(基準30〜140)、尿素窒素28mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、尿酸6.0mg/dL、血糖130mg/dL、HbA1c 5.0%(基準4.6〜6.2)、総コレステロール178mg/dL、トリグリセリド190mg/dL、Na 142mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 98mEq/L。CRP 11mg/dL。腹部CTを別に示す。

適切な対応はどれか。

直腸切断術
穿孔部閉鎖術
ドレナージ術
低位前方切除術
穿孔部切除閉鎖+人工肛門造設術〈Hartmann手術〉

解答: e

111D48の解説

高齢者の便秘はよくあるが、1年前からの発症であること、そして「医療機関を受診していなかった」という記載からは下部消化管の悪性腫瘍を考えさせる。機械的な通過障害の存在下で下剤を服用したことで、腸管穿孔が生じたのであろう。身体診察で板状硬を呈していること、腹部CTでfree airを認めていることも根拠となる。
a・d 直腸癌の術式。現時点では癌の存在も疑いに過ぎず、詳しい評価ができていないため不適切。まずは消化管穿孔に対する対応を行う。
b・e 閉鎖は行いたいが、単純閉鎖ではうまくいかない。穿孔部は切除し、断端の吻合はせず、人工肛門を造設することで便の逃げ道を確保する。ゆえにeが正しい。
c 膿瘍形成時に有効。

正答率:40%

テーマ:腸管穿孔の適切な対応

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