111D33

34歳の女性。労作時の息切れと動悸とを主訴に来院した。2か月前から症状が出現していたが、次第に呼吸苦が強くなってきたため受診した。体温37.8℃。脈拍108/分、整。右上肢血圧130/50mmHg、左上肢血圧86/42mmHg。左頸部から左鎖骨上窩にかけて血管雑音を聴取する。胸骨左縁第3肋間を最強点とするIII/VIの拡張期雑音を聴取する。胸部エックス線写真で心胸郭比58%、少量の胸水を認める。赤沈110mm/1時間。血液所見:赤血球410万、Hb 12.2g/dL、白血球12,600(桿状核好中球13%、分葉核好中球69%、好酸球1%、好塩基球1%、単球3%、リンパ球12%)、血小板23万。血液生化学所見:AST 48U/L、ALT 42U/L、LD 368U/L(基準176〜353)。CRP 9.3mg/dL。心エコー検査で左室拡張末期径58mm、左室駆出率60%、中等度の大動脈弁逆流を認める。胸部造影CTで上行大動脈壁の肥厚を認める。大動脈弓部と頸部血管の再構築画像を別に示す。入院後、利尿薬の投与を開始したところ息切れは速やかに改善した。

次に行うべき治療はどれか。

抗凝固療法
内膜剥離術
大動脈弁置換術
大動脈人工血管置換術
副腎皮質ステロイドの投与

解答: e

111D33の解説

若年女性の呼吸苦と動悸。右上肢で血圧が高く、左上肢で低い、という左右差がみられる。左頸部から左鎖骨上窩にかけて血管雑音を聴取していることから同部位の血管が狭窄していると考えよう。画像では大動脈弓部〜下行大動脈に縮窄を認め、左総頸動脈と左鎖骨下動脈に狭窄を指摘できる。高安動脈炎〈大動脈炎症候群〉の診断。胸骨左縁第3肋間を最強点とする拡張期雑音は大動脈弁閉鎖不全症〈AR〉である。大動脈の炎症性拡張と縮窄による後負荷の増加が原因と考えられる。
a 心房細動など血栓をきたしやすい病態の治療。
b 動脈硬化による一過性脳虚血発作〈TIA〉の治療。
c・d 高安動脈炎を背景としたARや大動脈の拡張・縮窄であるため、これらは第一選択とならない。
e 正しい。高安動脈炎には副腎皮質ステロイドが有効。

正答率:54%

テーマ:高安動脈炎〈大動脈炎症候群〉の治療

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