110I80

76歳の男性。全身倦怠感と呼吸困難とを主訴に来院した。昨日、引っ越しのために一日中荷物の移動を行った。その後、全身倦怠感を自覚していたが、21時ころに就寝した。午前2時ころ呼吸困難が生じてきたため、しばらく座位で安静にしたという。今朝も全身倦怠感と呼吸困難が改善せず、呼気時の喘鳴も出現してきたため妻とともに受診した。10年前に健康診断で不整脈を指摘されていたが、特に症状がなかったので医療機関を受診していなかった。意識は清明。身長167cm、体重66kg。体温36.2℃。脈拍84/分、不整。血圧152/66mmHg。呼吸数24/分。SpO2 95%(room air)。胸部の聴診ではIII音と心尖部に最強点を有するIII/VIの汎〈全〉収縮期雑音を聴取する。両側の胸部でwheezesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。両側の脛骨前面に圧痕を残す浮腫を認める。血液所見:赤血球459万、Hb 14.1g/dL、Ht 42%、白血球4,900、血小板19万。血液生化学所見:総蛋白7.6g/dL、アルブミン3.8g/dL、総ビリルビン1.1mg/dL、直接ビリルビン0.3mg/dL、AST 52U/L、ALT 49U/L、LD 420U/L(基準176〜353)、ALP 358U/L(基準115〜359)、γ-GTP 60U/L(基準8〜50)、アミラーゼ124U/L(基準37〜160)、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉478pg/mL(基準18.4以下)、尿素窒素16mg/dL、クレアチニン1.1mg/dL、Na 141mEq/L、K 4.0Emq/L、Cl 104mEq/L。CRP 1.3mg/dL。心電図(A)と胸部エックス線写真(B)とを別に示す。心エコーで左室駆出率44%であり、高度の僧帽弁逆流と下大静脈の拡大とを認める。
初期治療において投与するのはどれか。3つ選べ
酸素
利尿薬
硝酸薬
α遮断薬
ノルアドレナリン

解答: a,b,c

110I80の解説

10年前から心臓に何かしらの病変をかかえていたと考えられる高齢男性。昨日引っ越しのために体を動かしたことをきっかけに、急性心不全に至っている。心尖部の汎〈全〉収縮期雑音を聴取していることから僧帽弁閉鎖不全症〈MR〉の存在が考えやすい(このことは臨床文最後の「高度の僧帽弁逆流」からも分かる)。MRによる左房負荷により心房細動〈AF〉を呈したと考えられ、Aで示される。Bでは心拡大と肺うっ血とがみられる。
a 正しい。(高度ではないが)SpO2の低下がみられており、酸素投与は必要であろう。
b 正しい。浮腫や肺うっ血がみられており、利尿薬は有用。
c 正しい。肺うっ血に対し、硝酸薬は有用。
d・e α作用をdは減弱させ、eは増強させる。が、急性心不全にこれらの薬剤をまず用いることはない。

正答率:95%

テーマ:僧帽弁閉鎖不全症〈MR〉・心不全の初期治療

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