110D57

72歳の男性。乾性咳嗽、発熱および労作時呼吸困難を主訴に来院した。1か月前に左肺下葉の原発性肺腺癌に対し抗癌化学療法が開始されていた。治療開始後30日目の昨日、乾性咳嗽、37.5℃の発熱および労作時呼吸困難を認め、本日には乾性咳嗽の増悪と安静時の呼吸困難とを自覚するようになったため受診した。意識は清明。皮膚は湿潤している。下腿に浮腫を認めない。脈拍112/分、整。血圧152/102mmHg。呼吸数22/分。SpO2 90%(room air)。血液所見:赤血球380万、Hb 11.9g/dL、Ht 36%、白血球8,600(分葉核好中球68%、好酸球5%、単球5%、リンパ球22%)、血小板28万。血液生化学所見:総蛋白7.2g/dL、アルブミン4.2g/dL、AST 48U/L、ALT 52U/L、LD 752U/L(基準176〜353)、尿素窒素22mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、Na 144mEq/L、K 4.6mEq/L、Cl 108mEq/L、Ca 8.0mg/dL。免疫血清学所見:CRP 4.8mg/dL、β-Dグルカン10pg/mL未満(基準10未満)、サイトメガロウイルス抗原陰性。喀痰を認めないため喀痰培養は実施できなかった。血液培養は陰性。抗癌化学療法開始前の肺野条件の胸部CT(A)と今回来院時の肺野条件の胸部CT(B)とを別に示す。酸素投与を開始した。
対応として適切なのはどれか。2つ選べ
放射線療法
血栓溶解療法
抗コリン薬吸入
抗癌化学療法の中止
副腎皮質ステロイドの全身投与

解答: d,e

110D57の解説

Aでは左下葉に腫瘤影を認めるも、それ以外の肺野は正常だ。一方、Bでは腫瘤はやや縮小しているも、正常であった肺野に広範なスリガラス影がみられている。1か月前から抗癌化学療法が開始されており、薬剤性間質性肺炎を考えたい。類似の病態を呈するニューモシスチス肺炎(β-Dグルカンが上昇)やサイトメガロウイルス肺炎も除外されている。
a 放射線治療はむしろ間質性肺炎の原因となる(放射線肺炎)。
b 血栓症に対する治療。
c 気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉に対する治療。
d 正しい。原因となった可能性の高い抗癌化学療法を中止する。
e 正しい。薬剤性間質性肺炎には副腎皮質ステロイドが有効。

正答率:85%

テーマ:薬剤性間質性肺炎の対応

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