110D45

70歳の男性。傾眠状態と見当識障害のために、かかりつけの診療所から紹介されて来院した。4か月前から食道癌に対して抗癌化学療法を行っており、1か月前からはバソプレシン拮抗薬も併用していた。この数日は全身倦怠感と食欲不振があるため、かかりつけの診療所で点滴を受けていたが、傾眠状態と見当識障害が出てきたため紹介されて受診した。問いかけに応答はできるが反応は遅く内容は必ずしも適切でない。身体所見に異常を認めない。尿所見:比重1.012、蛋白(―)、糖(―)。血液生化学所見:アルブミン3.9g/dL、尿素窒素11mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、尿酸1.3mg/dL、血糖90mg/dL、Na 119mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 87mEq/L、Ca 9.6mg/dL。
この患者にまず行うべき対応はどれか。
水制限
食塩負荷
生理食塩液の投与
ループ利尿薬の投与
5%ブドウ糖液の投与

解答: a

110D45の解説

食道癌が背景にあり、「バソプレシン拮抗薬を使用していた」という病歴よりADH不適合分泌症候群〈SIADH〉を疑う。尿比重が保たれていることやNa 119mEq/Lと高度低下していることとも矛盾しない。
a 正しい。SIADHの治療である。傾眠状態の患者に水制限、というのも奇異な話であるが、消去法的に本選択肢以外選べない。
b 傾眠状態の患者に経口で食塩負荷するのは不可能である。静脈内投与することを「負荷」と形容すると拡大解釈したとしても、その場合はdと併用するべきであり、2つ選ばせる問題でないと正答としては選べない。
c 推奨されている食塩水の濃度は3%である。生理食塩水は0.9%なのでうすい。
d b・cで示したように、3%食塩水との併用で用いる。
e 低張な液であり、血漿浸透圧がさらに低下し、病態が悪化する。

正答率:37%

テーマ:ADH不適合分泌症候群〈SIADH〉の対応

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