110B50

次の文を読み、50〜52の問いに答えよ。
16歳の女子。胸部刺創のため同級生らに抱きかかえられて来院した。
現病歴:突然見ず知らずの男性に左前胸部をサバイバルナイフにて刺された。受傷後すぐに近くにいた同級生らに助け出され、一般救急外来に運ばれてきた。同級生らの話では、病院の近くの公園で、青年男性の無差別な暴力行為が発生しており、他にも数人が負傷しているとのことである。
既往歴:特記すべきことはない。
生活歴:高校生。
家族歴:両親、兄弟とも健康。
現症:意識は清明。身長150cm(推定)、体重40kg(推定)。体温35.5℃。脈拍120/分、整。血圧80mmHg(触診)。呼吸数28/分。SpO2 96%(room air)。ショック状態と判断し、直ちに医療従事者を集めた。蘇生処置室に搬入し、酸素投与を開始の上、静脈路を確保して輸液を開始した。左第5肋間鎖骨中線よりやや内側に長さ3cm程度の刺創を認めるが、体表への出血は止まっており、衣服には径数cm程度の血液が付着している。
この患者のショックの原因を鑑別するのに有用な身体所見はどれか。
皮膚浸潤
瞳孔散大
意識レベル
口腔内乾燥
頸静脈怒張

解答: e

110B50の解説

通り魔事件。血圧は触診で80mmHgであり、ショック状態である。サバイバルナイフ刺傷、という記載からは真っ先に出血性ショックを考えるが、それにしては「体表への出血が止まっており、衣服には径数cm程度の血液が付着している」とあり、出血量は多くないようだ。左第5肋間鎖骨中線やや内側に被傷していること、頻脈を呈していること、奇脈を呈していること(次問に「吸気時に大腿動脈拍動が減弱」とある)、心音が減弱していること(これも次問に記載あり)などから、心タンポナーデを呈している可能性が高い。また、これも次問の記載だが「呼吸音が左側でわずかに減弱している」ため、気胸も存在するようだ。
a 交感神経作用亢進を示唆するに過ぎず、ショックの原因鑑別にはつながらない。
b・c 重症度を反映する所見だが、ショックの原因鑑別にはつながらない。
d 脱水を示唆するに過ぎず、ショックの原因鑑別にはつながらない。
e 正しい。心タンポナーデや気胸では閉塞性ショックを呈し、頸静脈の怒張をみる。

正答率:89%

テーマ:【長文1/3】ショックの原因鑑別に有用な身体所見

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