110B43

63歳の男性。安静時の左前胸部の絞扼感を主訴に来院した。3週前から階段を上るときに左前胸部の絞扼感が出現するようになった。症状は左前胸部の広い範囲で咽頭部や左肩にも放散する。背部痛は伴わず食事との関係もない。これまでは、3分程度の安静で改善するので様子をみていたが、昨日からは歩行時や安静時にも生じるようになった。本日も午前9時にテレビを見ていたときに20分程度の同様な発作が生じたため心配した家族とともに午前11時に受診した。来院時に症状はない。家族歴と既往歴とに特記すべきことはない。喫煙は40本/日を41年間。意識は清明。身長170cm、体重83kg。脈拍72/分、整。血圧168/90mmHg。SpO2 98%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。胸部に圧痛を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。尿所見:蛋白(―)、糖(―)。便所見:潜血 (―)。血液所見:赤血球480万、Hb 14.2g/dL、Ht 48%、白血球8,800、血小板18 万。血液生化学所見:総蛋白6.2g/dL、AST 38U/L、ALT 37U/L、LD 205U/L(基準176〜353)、CK 110U/L(基準30〜140)、尿素窒素25mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、トリグリセリド190mg/dL、HDLコレステロール27mg/dL、 LDL コレステロール148 mg/dL、Na 136 mEq/L、K 4.0 mEq/L、Cl 100 mEq/L。トロポニンT陰性。受診時の心電図は、心拍数72/分、洞調律で胸部誘導V1から V4で陰性T波を認めるが有意なST上昇や低下を認めない。胸部エックス線写真で異常を認めない。心エコーでは前壁から心尖部にかけて壁運動の軽度低下を認めた。
この患者への対応として適切でないのはどれか。
入院を勧める。
硝酸薬を投与する。
負荷心電図を行う。
抗血小板薬を投与する。
冠動脈の精査を考慮する。

解答: c

110B43の解説

労作時の左前胸部絞扼感が安静時にも出現するようになっている。急性冠症候群〈ACS〉であろう。CKやトロポニンTは陰性であり、急性心筋梗塞まで至っているかは断定できないため、さらなる精査が必要となる。
a・e 入院によるさらなる精査が必要である。
b・d ACSに有効な治療薬である。
c 誤り。負荷心電図は労作性狭心症に行う。不安定狭心症に行ってはならない。

正答率:94%

テーマ:急性心筋梗塞〈AMI〉患者に行ってはいけない対応

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし