110A45

57歳の女性。半年前から続く左難聴と左耳閉感とを主訴に来院した。発症初期に38℃前後の発熱が続き3kgの体重減少があった。1か月前に自宅近くの診療所で抗菌薬投与と左鼓膜穿刺とを施行されるも症状は変わらなかった。拍動性の耳鳴はない。血液所見:赤血球410万、Hb 11.8g/dL、Ht 35%、白血球10,800(桿状核好中球2%、分葉核好中球70%、好酸球3%、好塩基球1%、単球4%、リンパ球20%)、血小板27万。血液生化学所見:尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.5mg/dL、Na 142mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 106mEq/L。免疫血清学所見:CRP 4.5mg/dL、MPO-ANCA陰性、PR3-ANCA陽性であった。胸部エックス線写真で異常を認めない。左鼓膜写真(A)と左側頭骨CTの水平断像(B)とを別に示す。
考えられる疾患はどれか。
滲出性中耳炎
グロムス腫瘍
結核性中耳炎
真珠腫性中耳炎
Wegener肉芽腫症

解答: e

110A45の解説

PR3-ANCA陽性であることから多発血管炎性肉芽腫症〈GPA〉〈Wegener肉芽腫〉の診断がすぐについたようだ。GPAの一症候として中耳炎があることをこの機会に覚えておこう。画像Aでは鼓膜に異常を認めておらず、画像Bでは乳突蜂巣の含気不良(すなわち中耳炎の所見)がある。
a 滲出性中耳炎では画像Aで陥凹や液体の貯留がみられる。
b グロムス腫瘍では拍動性の耳鳴がみられることがある。
c 結核性中耳炎では画像Aで鼓膜の穿孔がみられやすい。
d 真珠腫性中耳炎では画像Aで真珠腫をみる。
e 正しい。上記の通り。
※PR3-ANCA陽性だけでよく分からずとも診断がついてしまう。昨今の臨床問題にありがちなパターンであり、こうした出題が今後減っていくことを執筆者としては切に願う。

正答率:87%

テーマ:多発血管炎性肉芽腫症〈GPA〉〈Wegener肉芽腫〉の診断

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