109I71

78歳の男性。気分不良のため搬入された。3年前から慢性腎不全のため血液透析を受けている。昨日午後の透析後、発熱と気分不良とを認め、安静にしていたが改善しないため今朝8時に救急搬送された。身長158cm、体重55kg。体温37.5℃。脈拍140/分、整。血圧86/56mmHg。右殿部から大腿にかけて発赤と腫脹とを認め、会陰部右側と陰嚢とに潰瘍があり、悪臭のある膿が出ている。血液所見:赤血球378万、Hb 11.8g/dL、Ht 36%、白血球16,900(桿状核好中球36%、分葉核好中球60%)、血小板14万。血液生化学所見:総蛋白6.1g/dL、アルブミン3.0g/dL、AST 14U/L、ALT 8U/L、LD 245U/L(基準176〜353)、尿素窒素45mg/dL、クレアチニン7.8mg/dL、Na 137mEq/L、K 3.9mEq/L、Cl 100mEq/L、プロカルシトニン23.4ng/mL(基準0.05以下)。CRP 21mg/dL。外陰部の写真(A)と腹部・骨盤部単純CT(B)とを別に示す。
輸液による循環管理と抗菌薬全身投与とともに、早期に行うべき治療はどれか。
抗真菌薬投与
創の縫合閉鎖
切開排膿ドレナージ
免疫グロブリン製剤投与
副腎皮質ステロイド投与

解答: c

109I71の解説

慢性腎不全のため血液透析を受けている(すなわち易感染性の)高齢男性に発熱と気分不良がみられている。画像Aにて右殿部〜大腿内側にかけての発赤と会陰部右側と陰嚢との潰瘍がみられ(本文に既に書いてあることだが)、画像Bでは会陰部〜陰嚢のガス貯留と液体成分(おそらく膿)の貯留がみられる。Fournier壊疽の診断。本格的な出題は国試初であり、以下の基本事項を参照されたい。
  *  *  *
Fournier壊疽
【概念】(主に男性の)外陰部にできた壊死性筋膜炎
【原因】(糖尿病や血液透析中など易感染性の宿主の)外傷・熱傷など
【病態】連鎖球菌、Staphylococcus(ブドウ球菌)属、Aeromonas属などの浅層筋膜侵入
【症候】激痛・発赤・腫脹・潰瘍形成・排膿(悪臭+)
【治療】デブリドマン・抗菌薬投与
  *  *  *
a プロカルシトニン〔甲状腺のC細胞で産生されるカルシトニンの前駆ペプチド。重症細菌感染症にて炎症性サイトカイン(TNF-αなど)により肺や小腸からも産生されるため、敗血症などの重症度評価に有用(ウイルス感染では分泌されない)〕の上昇があり、真菌感染ではない。
b 膿瘍形成とガス貯留があり、いきなり縫合閉鎖するのは早計。
c 正しい。早急なデブリドマンと切開排膿ドレナージが必要である。
d 破傷風感染を疑った場合に行う。
e 重症細菌感染症であり、病態がさらに悪化しかねない。

正答率:98%

テーマ:フルニエ〈Fournier〉壊疽(壊死性筋膜炎)の治療

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