109I56

68歳の男性。左下肢の紫斑を主訴に来院した。2週前から左下肢に紫斑が出現し徐々に拡大した。1週前から左下肢に疼痛も自覚するようになったため受診した。これまでに出血症状の既往はない。意識は清明。体温36.4℃。血圧154/88mmHg。腹部は平坦、軟で、圧痛や抵抗を認めない。血液所見:赤血球210万、Hb 6.8g/dL、Ht 20%、白血球6,400(桿状核好中球6%、分葉核好中球54%、好酸球2%、単球6%、リンパ球32%)、血小板30万、出血時間3分20秒(基準7分以下)、PT 90%(基準80〜120)、APTT 64.7秒(基準対照32.2)、血漿フィブリノゲン256mg/dL(基準200〜400)、血清FDP 4μg/mL(基準10以下)。凝固因子検査の結果は第VIII因子活性6%(基準78〜165)、第IX因子活性92%(基準67〜152)、von Willebrand因子活性は正常であった。左大腿から膝関節部内側の写真を別に示す。
最も考えられるのはどれか。
血友病A
血友病B
後天性血友病
播種性血管内凝固〈DIC〉
免疫性血小板減少性紫斑病

解答: c

109I56の解説

出血時間・PTは正常だが、APTTのみ遅延あり。画像では広範な紫斑がみられている。実質的に国試初出題となる疾患であり、消去法でのアプローチが有効であったと思われる。
a・b 「これまでに出血症状の既往はない」とのこと。これらであれば小児期から症状がみられるはず。
c 正しい。後天性血友病が考えられる。
d 播種性血管内凝固〈DIC〉では出血時間やPTも異常となる。
e 免疫性血小板減少性紫斑病〈ITP〉では出血時間も遅延する。

【参考】93F28に以下のような問題がある。

 79歳の男性。生来健康であった。2週前から四肢に出血斑が出現していたが、数日前から出血斑が全身に広がったため来院した。家族に出血傾向を示す者はいない。血液所見:赤血球453万、Hb 12.3g/dl、Ht 37.7%、白血球6700、血小板19万。出血時間1分30秒(基準7分以下)、PT 10.7秒(基準対照11.3)、APTT 108秒(基準対照32.2)、血漿フィブリノゲン444mg/dl(基準200〜400)、血清FDP4μg/ml(基準5以下)。抗カルジオリピン抗体陰性。 
 最も考えられるのはどれか。 
 a 血友病A 
 b von Willebrand病 
 c 抗リン脂質抗体症候群 
 d 循環抗凝固因子による出血傾向 
 e 播種性血管内凝固

当時は消去法で何となくdを正答としていたのだが、109I56に照らして考えてみるに、後天性血友病(第VIII因子に対する自己抗体産生が原因)のことを言っていたのかもしれない。このように昔の問題で、業界自体がやんわり流していた問題であっても、後々脚光を浴びることが多々あり、国試分析というのは面白い。

正答率:79%

テーマ:後天性血友病の診断

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