109D56

72歳の男性。左下腹部痛と発熱とを主訴に来院した。生来便秘がちであった。一昨日、少量の排便後に左下腹部痛が生じた。昨夜から腹痛が増悪し、38.6℃の発熱が出現したため受診した。体温37.6℃。脈拍84/分、整。血圧142/86mmHg。呼吸数24/分。腹部は平坦で、左側腹部に圧痛を認めるが、筋性防御と反跳痛とは認めない。血液所見:赤血球382万、Hb 12.8g/dL、Ht 35%、白血球18,300(桿状核好中球45%、分葉核好中球32%、好酸球2%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球14%)、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白7.3g/dL、アルブミン3.7g/dL、総ビリルビン0.8mg/dL、AST 30U/L、ALT 42U/L、LD 238U/L(基準176〜353)、ALP 350U/L(基準115〜359)、γ-GTP 60U/L(基準8〜50)、アミラーゼ62U/L(基準37〜160)、CK 50U/L(基準30〜140)、尿素窒素10mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、尿酸6.0mg/dL、血糖110mg/dL、総コレステロール210mg/dL、トリグリセリド130mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 97mEq/L。CRP 6.5mg/dL。腹部超音波検査で多数の大腸憩室と左側腹部の液体貯留を認める。腹部造影CTを別に示す。
治療として適切なのはどれか。2つ選べ
高圧浣腸
降圧薬投与
抗菌薬投与
右半結腸切除術
穿刺ドレナージ

解答: c,e

109D56の解説

多数の大腸憩室と左側腹部の液体貯留があるとのことだが、造影CT上でも左側腹部に低吸収域がみられている。右側腹部と比べると若干周囲の脂肪織に混濁があり、炎症の存在が示唆される。生来便秘がちである場合、腸管への内圧がかかりやすく憩室発生のリスクとなる。そうした憩室が多発している状況では破綻による大腸穿孔をきたしやすく、本症例ではそれによる後腹膜膿瘍を形成している状況と判断できる。
a 穿孔が予想され、対応として禁忌。
b 出血がある場合に考慮する(血圧が高い場合、出血が止まりにくいため)。
c 正しい。好中球優位の白血球上昇やCRPの上昇より細菌感染が考えられる。
d 大腸癌を疑った場合に考慮する。
e 正しい。膿瘍を形成しており、ドレナージが有効。

正答率:80%

テーマ:大腸憩室炎に由来する大腸穿孔と後腹膜膿瘍への対応

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