109I49

75歳の男性。乾性咳嗽と発熱とを主訴に来院した。5日前に湿性咳嗽、喀痰および発熱が生じたため自宅近くの診療所を受診し、非ステロイド性抗炎症薬と抗菌薬とを5日分処方された。内服3日目には解熱したが5日目に乾性咳嗽と発熱とが出現したため再び診療所を受診し、胸部エックス線写真で異常を認めたため紹介されて受診した。身長165cm、体重63kg。体温37.3℃。脈拍64/分、整。血圧132/64mmHg。呼吸数20/分。咽頭に発赤を認めない。頸静脈の怒張を認めない。心音に異常を認めない。両側にfine cracklesを聴取する。下腿に浮腫を認めない。血液所見:赤血球376万、Hb 13.7g/dL、Ht 35%、白血球10,100(桿状核好中球4%、分葉核好中球76%、好酸球3%、好塩基球0%、単球5%、リンパ球12%)、血小板35万。血液生化学所見:LD 386U/L(基準176~353)、尿素窒素14mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、血糖98mg/dL、HbA1c 6.1%(基準4.6~6.2)、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉23.9pg/mL(基準18.4以下)、KL-6 632U/mL(基準500未満)。免疫血清学所見:CRP 5.0mg/dL、β-D-グルカン4pg/mL未満(基準10以下)、サイトメガロウイルス抗原陰性。動脈血ガス分析(room air):pH 7.43、PaCO2 36Torr、PaO2 69Torr、HCO323mEq/L。気管支肺胞洗浄液所見:細胞数3.5×106/mL(肺胞マクロファージ12%、リンパ球85%、好中球1%、好酸球2%)。胸部エックス線写真(A)と胸部CT(B)とを別に示す。
最も考えられる疾患はどれか。
薬剤性肺炎
急性左心不全
日和見感染症
特発性肺線維症
急性呼吸促迫症候群

解答: a

109I49の解説

画像A, Bにてスリガラス影がみられる。これは間質性肺炎の像であり、5日前に非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉と抗菌薬とを投与されていることとあわせ、薬剤性肺炎が考えやすい。気管支肺胞洗浄液ではリンパ球が上昇しているが、確定診断には役立たないため、あくまで「薬剤性肺炎でリンパ球が上昇しても矛盾はない」といった位置づけで押さえよう。
a 正しい。上記の通り。
b 急性左心不全であれば聴診にてcoarse cracklesを聴取する。また、エックス線にて心拡大がみられ、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉値も高度上昇する。
c 日和見感染ではニューモシスチス肺炎(→β-D-グルカンが上昇するはず)やサイトメガロウイルス肺炎(→サイトメガロウイルス抗原が陽性となるはず)などが考えられるも、検査データより否定的。
d 本症例では急性発症で明確な原因がある。CTにて蜂巣肺もみられていないため、特発性肺線維症は否定的。
e 急性呼吸窮迫〈促迫〉症候群〈ARDS〉は多発外傷や敗血症、急性膵炎といった強いストレスが原因となる非心原性肺水腫である。ARDSはPaO2/FiO2≦300で診断される(FiO2は吸入酸素濃度であり、大気中では0.21としてよい)。本患者では69÷0.21≒329となり、否定される。

正答率:76%

テーマ:薬剤性肺炎の診断

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