109G64

次の文を読み、64~66の問いに答えよ。
86歳の女性。発熱と呼吸困難とを主訴に来院した。
現病歴:ADLは自立していたが半年前から時々食事中にむせることがあった。2日前から咳や痰を伴う38℃台の発熱が出現した。しばらく自宅で様子をみていたが、今朝になり呼吸困難も生じたため同居中の長女に付き添われて受診した。
既往歴:60歳ころから高血圧症、80歳ころから心房細動で投薬治療中。
生活歴:喫煙歴と飲酒歴とはない。
家族歴:父親が心筋梗塞で死亡。母親が胃癌で死亡。
現症:意識レベルはJCSI-3。身長150cm、体重54kg。体温38.4℃。脈拍112/分、不整。血圧152/72mmHg。呼吸数24/分。SpO2 94%(鼻カニューラ2L/分 酸素投与下)。頸静脈の怒張を認める。III音を聴取する。IV音を聴取しない。心尖部を最強点とするIII/VIの汎〈全〉収縮期雑音を聴取する。右背下部でcoarse cracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。両側下腿に浮腫を認める。
検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血1+、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球347万、Hb 9.9g/dL、Ht 30%、白血球10,200(桿状核好中球30%、分葉核好中球45%、好酸球1%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球17%)、血小板28万。血液生化学所見:総蛋白5.4g/dL、アルブミン2.7g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 28U/L、ALT 26U/L、LD 280U/L(基準176~353)、ALP 174U/L(基準115~359)、γ-GTP 24U/L(基準8~50)、アミラーゼ72U/L(基準37~160)、CK 135U/L(基準30~140)、尿素窒素27mg/dL、クレアチニン1.1mg/dL、尿酸6.9mg/dL、血糖112mg/dL、HbA1c 6.0%(基準4.6~6.2)、Na 133mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 97mEq/L。CRP 7.4mg/dL。胸部エックス線写真で右下肺野浸潤影、肺血管陰影の増強、右肋骨横隔膜角鈍化、右第2弓の二重陰影および左第4弓の突出を認める。12誘導心電図で心拍数110/分の心房細動を認める。
経胸壁心エコー検査で予想されるのはどれか。
大動脈弁狭窄症
大動脈弁閉鎖不全症
僧帽弁狭窄症
僧帽弁閉鎖不全症
肺動脈弁狭窄症

解答: d

109G64の解説

高齢女性の発熱と呼吸困難。半年前から食事中にむせており、誤嚥性肺炎が考えられる。胸部エックス線でも右下肺野に浸潤影を認めている。心尖部を最強点とする汎〈全〉収縮期雑音があり、僧帽弁閉鎖不全症〈MR〉が存在しそうだ。このため容量負荷を呈し、III音を聴取している。長期にわたる心負荷で心房細動〈AF〉が出現したのであろう。なお、右第2弓の二重陰影は左房拡大を意味する。MRでは左房と左室の拡大がみられ、右第2弓の二重陰影が左房拡大を、左第4弓の突出が左室拡大を表す。
a 大動脈弁狭窄症〈AS〉では胸骨右縁第2肋間の収縮期雑音を聴取する。
b 大動脈弁閉鎖不全症〈AR〉では胸骨左縁第3~4肋間の拡張期雑音を聴取する。
c 僧帽弁狭窄症〈MS〉では心尖部の拡張期雑音を聴取する。
d 正しい。上記の通り。
e 肺動脈弁狭窄症〈PS〉では胸骨左縁第2肋間の収縮期雑音を聴取する。

正答率:85%

テーマ:【長文1/3】僧帽弁閉鎖不全症〈MR〉の診断

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