108I80

29歳の男性。咳嗽を主訴に来院した。1年前から左陰嚢の無痛性腫大を自覚していたがそのままにしていた。3か月前から咳が出るようになり市販の鎮咳薬を内服しても軽快しないために受診した。意識は清明。身長176cm、体重74kg。体温36.8℃。脈拍88/分、整。血圧110/72mmHg。呼吸数20/分。SpO2 98%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。血液所見:赤血球462万、Hb 14.0g/dL、Ht 43%、白血球7,800、血小板35万。血液生化学所見:LD 853U/L(基準176~353)、hCG 105mIU/mL。α-フェトプロテイン〈AFP〉974ng/mL(基準20以下)。陰嚢部超音波検査で左精巣に長径8cmの内部不均一な充実性腫瘤像を認める。腹部造影CTで他臓器への転移を認めない。胸部エックス線写真(A)と肺野条件の胸部単純CT(B)とを別に示す。
行うべき対応はどれか。2つ選べ
精巣の針生検
抗癌化学療法
肺病変の針生検
高位精巣摘出術
抗菌薬の点滴静注

解答: b,d

108I80の解説

1年前から左陰嚢の無痛性腫大があり、精巣腫瘍を考えたい。精巣腫瘍の好発年齢は10 歳以下と 20~40 歳の二峰性ピークであるが、このうち30歳前後が最も多い。咳嗽があることから肺転移を予想される。実際、画像A, Bにて多発肺転移を認めている。LD, hCG, AFPの3系統すべてが上昇しているため精巣腫瘍の種類については断言できないが、AFPが上昇している場合には非セミノーマが考えやすい。
a 精巣腫瘍は生検禁忌。
b 正しい。肺転移もあり、dの後、全身化学療法を行う。
c 精巣を摘除し病理診断を行えば十分であり、転移巣まで生検する必要はない。
d 正しい。まず高位精巣摘除術を行い、摘除精巣により病理的に確定診断を行う。
e 本病態は細菌感染ではない。

正答率:81%

テーマ:多発肺転移した精巣腫瘍への対応

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