108I71

42歳の女性。発熱と乏尿とを主訴に来院した。半年前から右示指と中指の中手指節関節、左示指の近位指節間関節および左環指の中手指節関節に腫脹と疼痛とを自覚していた。1か月前からは両側手関節にも腫脹と疼痛とを自覚した。2週前に受診し非ステロイド性抗炎症薬が処方され著効したが、3日前から発熱と乏尿とが出現した。意識は清明。体温38.0℃。脈拍84/分、整。血圧144/88mmHg。呼吸数18/分。2週前と比べ5kgの体重増加を認める。両側の下腿に浮腫を認める。尿所見:蛋白1+、糖(-)、潜血1+、沈渣に白血球円柱1~4/1視野。血液所見:赤血球408万、Hb 10.9g/dL、Ht 32%、白血球12,300(桿状核好中球6%、分葉核好中球63%、好酸球4%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球20%)、血小板38万。血液生化学所見:総蛋白6.8g/dL、アルブミン3.0g/dL、尿素窒素86mg/dL、クレアチニン6.6mg/dL、尿酸10.2mg/dL、Na 132mEq/L、K 5.2mEq/L、Cl 104mEq/L。免疫血清学所見:CRP 10mg/dL、リウマトイド因子〈RF〉80IU/mL(基準20未満)、抗CCP抗体245U/mL(基準4.5未満)。手の単純エックス線撮影で関節にびらんを認めた。入院後、非ステロイド性抗炎症薬を中止したところ解熱した。入院6日目にクレアチニンは3.0mg/dLに低下したが関節痛は悪化した。
現時点での治療薬として最も適切なのはどれか。
抗菌薬
オピオイド
副腎皮質ステロイド
抗TNF-α抗体製剤
非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉

解答: c

108I71の解説

難問であるが、考える良問。

序盤には関節リウマチ〈RA〉と思われる症状が列挙してある。これに対し、非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉が処方されている。ところが、3日前から腎機能障害(クレアチニン6.6mg/dl)がみられたという。NSAIDの副作用としての間質性腎炎を考えたい。当然、NSAIDsを中止するという運びになるが、するとこれも当然ながらRAが再燃し関節痛が悪化している。

すなわち、RAと間質性腎炎のシーソー状態になっているというわけだ(一方の対応をすると一方が悪化する)。この状況を打破するには、RAにも間質性腎炎にも双方に有効な治療薬を用いるしかない。

a 細菌感染ではない。
b 対症的な痛み止めにすぎない。
c 正しい。副腎皮質ステロイドはRAにも間質性腎炎にも有効である。
d 抗TNF-α抗体製剤はRAに有効であるが、通常はメトトレキサートと併用する。そして、メトトレキサートには腎障害の副作用があるため、使用できない。
e NSAIDs投与では間質性腎炎が悪化する。

正答率:70%

テーマ:非ステロイド性抗炎症薬〈NSAID〉による腎障害を起こした関節リウマチ〈RA〉の治療薬

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