108A54

62歳の男性。今年の健康診断で高血糖を指摘され来院した。10年前から健康診断で毎年、高血糖と高血圧とを指摘されていたが受診しなかった。喫煙は15本/日を40年間。身長168cm、体重70kg、腹囲88cm。脈拍80/分、整。血圧188/96mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。下腿に浮腫を認めない。アキレス腱反射は両側で消失している。尿所見:蛋白2+、糖4+、ケトン体(-)。血液生化学所見:アルブミン3.8g/dL、AST 36U/L、ALT 45U/L、尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、尿酸8.3mg/dL、空腹時血糖212mg/dL、HbA1c 9.8%(基準4.6~6.2)、トリグリセリド170mg/dL、LDLコレステロール139mg/dL、Na 139mEq/L、K 4.8mEq/L、Cl 104mEq/L。眼底検査で単純網膜症を認める。摂取エネルギーと塩分とを制限する食事療法と運動療法とを開始した。
治療薬として適切なのはどれか。
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬
サイアザイド系利尿薬
スピロノラクトン
ループ利尿薬
β遮断薬

解答: a

108A54の解説

「10年前から健康診断で毎年、高血糖と高血圧とを指摘されていたが受診しなかった」とあり、コントロールは悪そうだ。そのため、腎症・網膜症・神経症状、という3大合併症がすべて見られている。この状況下ではいくら初診といえど、食事療法と運動療法だけでは改善が難しく、内服薬を処方することとなる。
a 正しい。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬やアンジオテンシン変換酵素阻害薬が糖尿病性腎症に有効。
b 108G55のように、通常の高血圧であればサイアザイドは第一選択となりうるも、サイアザイドには尿酸値を上昇させる副作用があり、本患者は尿酸8.3mg/dlと高いことから使用すべきではない。
c 抗アルドステロン薬は血清カリウム値を上昇させるため、本患者では使用しにくい。
d 「下腿に浮腫を認めない」とあり、用いる必要はない。
e β遮断薬は交感神経を抑制する作用があるため、今後インスリンや経口血糖降下薬導入となった際に副作用としてみられる低血糖の症状(冷汗や頻脈など)がマスクされる恐れがある。ゆえに治療薬として適さない。

正答率:89%

テーマ:糖尿病性腎症の治療薬

フォーラムへ投稿

関連トピック