108A34

36歳の女性。分娩後の頭痛と視野障害を主訴に来院した。妊娠28週ころから頭痛、30週から左眼の視野障害が出現した。多尿や多飲はない。身長165cm、体重62kg。脈拍76/分、整。血圧118/74mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。対面法による視野検査により両耳側に欠損を認める。尿所見:比重1.024、蛋白(-)、糖(-)。血液生化学所見:AST 33U/L、ALT 17U/L、クレアチニン0.6mg/dL、血糖92mg/dL、総コレステロール124mg/dL、Na 140mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 104mEq/L、アンジオテンシン変換酵素〈ACE〉18U/L(基準8.3~21.4)、TSH 0.15μU/mL(基準0.2~4.0)、FT4 0.74ng/dL(基準0.8~2.2)、ACTH 11.4pg/mL(基準60以下)、コルチゾール1.8μg/dL(基準5.2~12.6)、GH 2.7ng/mL(基準5以下)、IGF-I 164ng/mL(基準112~271)、プロラクチン25.4ng/mL(基準15以下)。免疫血清学所見:CRP 0.3mg/dL、抗サイログロブリン抗体24U/mL(基準0.3以下)。頭部単純MRIのT1強調矢状断像(A)と頭部造影MRIのT1強調冠状断像(B)を別に示す。
最も考えられるのはどれか。
髄膜腫
下垂体腺腫
頭蓋咽頭腫
サルコイドーシス
リンパ球性下垂体炎

解答: e

108A34の解説

両耳側半盲と、頭部MRIより下垂体に問題病変があることは見て取れる。ホルモンはプロラクチンの単独上昇がある以外、低値を示している。プロラクチノーマ(すなわち下垂体腺腫)が他ホルモンの産生を抑制している可能性も考えるが、以下2点より否定的。まず、「分娩後」という記載。分娩後に下垂体腺腫が好発することはない。また、抗サイログロブリン抗体が上昇している。自己免疫疾患を示唆する検査結果と言えよう。
診断はリンパ球性下垂体炎。約1/3の症例でプロラクチンが上昇することが知られている。
a 下垂体近傍での発生はまれ。
b 抗サイログロブリン抗体上昇の説明がつかない。
c 下垂体の上方に発生する。尿崩症を合併することが多いも、本患者の尿比重は1.024と比較的高め。
d アンジオテンシン変換酵素の上昇を認める。
e 正しい。上記の通り。

正答率:63%

テーマ:リンパ球性下垂体炎の診断

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