108I66

68歳の男性。白血球増多の精査を目的に来院した。3年前から白血球数の増加を指摘されていたがそのままにしていた。発熱、盗汗および体重減少はない。両側の頸部、腋窩および両側鼠径部に無痛性で弾性硬の径1cm未満のリンパ節を数個ずつ触れる。口蓋扁桃の腫大を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球479万、Hb 14.0g/dL、Ht 42%、白血球25,730(桿状核好中球3%、分葉核好中球16%、好酸球1%、単球2%、リンパ球78%)、血小板23万。血液生化学所見:総蛋白6.1g/dL、IgG 814mg/dL(基準960~1,960)、IgA 142mg/dL(基準110~410)、IgM 125mg/dL(基準65~350)、総ビリルビン0.4mg/dL、AST 14U/L、ALT 16U/L、LD 483U/L(基準176~353)、尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL。CRP 0.2mg/dL。CTによる全身検索では、径が1cm以上のリンパ節腫大を認めず、肝と脾の腫大を認めない。末梢血塗抹May-Giemsa染色標本を別に示す。骨髄穿刺検査では有核細胞数43.5万で、骨髄血塗抹May-Giemsa染色標本でも末梢血で増加しているのと同様の細胞が81%を占めている。末梢血細胞の表面マーカー検査では、CD5、CD20、CD23陽性の細胞が増加している。
対応として最も適切なのはどれか。
経過観察
放射線治療
抗菌薬の予防投与
同種造血幹細胞移植
多剤併用抗癌化学療法

解答: a

108I66の解説

白血球数が25,730と増加しており、その大半はリンパ球(78%)である。末梢血塗抹May-Giemsa染色標本(画像)でも小型のリンパ球が多く見られている。その由来を探るべく実施した骨髄穿刺検査では有核細胞数43.5万とやはり増加がみられ、骨髄由来の増殖性疾患であることが分かる。3年前からの経過、CD5・CD20・CD23陽性の細胞が増加していることと合わせ、慢性リンパ性白血病〈CLL〉の診断となる。
a 正しい。CLLの病期分類にはRai分類やBinet分類があるが、そのいずれでも無症状の場合は化学療法の恩恵が少ないため経過観察でよいとされる。
b・d 一般的にCLLでは使用されない。
c CLLでは免疫不全を呈することもあり、その場合抗菌薬の予防投与も有効となるが、現時点では好中球数も保たれており、不要である。
e 有症状のCLLに対しては化学療法が有効となる。フルダラビンやシクロホスファミドを用いる。CD20が陽性の場合、リツキシマブも有効。

正答率:60%

テーマ:慢性リンパ性白血病〈CLL〉への対応

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