108F28

次の文を読み、28、29の問いに答えよ。
44歳の男性。右下腿の腫脹を主訴に来院した。
現病歴:3か月前に右踵部に、ささくれたような傷ができたことに気付いた。市販の軟膏を塗っていたが創は次第に大きくなってきた。1か月前に自宅近くの医療機関を受診し、外用薬を処方され塗布していた。その後2週に一度、創部処置のため通院していたが、7日前から創部の臭気が強くなり軽度の発熱を認めた。2日前から右下腿が腫脹し疼痛を伴い、全身倦怠感が強くなったため受診した。
既往歴:24歳から高血糖を指摘され、30歳から投薬を受けていた。40歳から通院しなくなっていた。
生活歴:喫煙は40歳まで10本/日を20年間。4年前から禁煙している。
家族歴:父親が糖尿病。
現 症:意識は清明。身長165cm、体重55kg。体温38.5℃。呼吸数22/分。脈拍72/分、整。眼瞼結膜は軽度貧血様だが、眼球結膜に黄染は認めない。口唇と舌は乾燥している。心雑音は聴取しない。右肋骨弓下に肝を2cm触知する。右鼠径部に圧痛を伴う径1cmのリンパ節を複数個触れる。膝蓋骨上端より10cm近位の大腿周径は右38cm、左37.5cm。膝蓋骨下端より10cm遠位の下腿周径は右36cm、左33cm。右膝窩動脈は触知するが、右足背動脈、右後脛骨動脈は触知しない。右下腿に紅斑と腫脹があり、熱感を伴う。両側足底の感覚鈍麻を認める。両下腿の写真(A)を別に示す。
検査所見:尿所見:蛋白1+、糖2+、ケトン体(-)。血液所見:赤血球428万、Hb 10.9g/dL、Ht 35%、白血球12,200(桿状核好中球18%、分葉核好中球64%、単球4%、リンパ球12%)、血小板29万、PT 77%(基準80~120)。血液生化学所見:CK 175U/L(基準30~140)、尿素窒素7mg/dL、クレアチニン0.5mg/dL、血糖323mg/dL、HbA1c 8.8%(基準4.6~6.2)。CRP 13mg/dL。下腿造影CT(B)を別に示す。
この患者の診断として最も考えられるのはどれか。
Buerger病
リンパ浮腫
壊死性筋膜炎
深部静脈血栓症
静脈うっ滞性潰瘍

解答: c

108F28の解説

画像A, Bからも分かるように、右下腿が高度に発赤・腫脹している。本文によれば熱感も伴っているという。痛みについての記載がないのは、糖尿病による感覚鈍麻のためであろう。画像Aでは右踵の潰瘍が指摘でき、ここから細菌が入りこんだ可能性が高い。画像Bにて筋膜に沿った低吸収域があり、炎症を示唆する。壊死性筋膜炎の診断。CKの上昇も矛盾しない。糖尿病による易感染性が原因と考えられる。
a・d・e Buerger病や深部静脈血栓症、静脈うっ滞でも末梢血管閉塞による潰瘍をみることはあるが、画像Bから本病態は筋膜周囲が原因と考えられるため、否定される。
b リンパ浮腫では発赤・腫脹をみない。
c 正しい。上記の通り。

正答率:92%

テーマ:【長文1/2】壊死性筋膜炎の診断

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