108D47

61歳の男性。手のこわばりを主訴に来院した。4か月前からRaynaud現象と手のこわばりとを自覚していた。意識は清明。体温37.3℃。脈拍72/分、整。血圧130/84mmHg。呼吸数16/分。SpO2 95%(room air)。上肢と体幹に皮膚硬化を認める。心音に異常を認めない。呼吸音は両側の背下部にfine cracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。尿所見:蛋白1+、潜血(-)、沈渣に硝子円柱1/数視野。血液所見:赤血球383万、Hb 12.0g/dL、Ht 35%、白血球9,200、血小板28万。血液生化学所見:総蛋白6.9g/dL、アルブミン3.5g/dL、IgG 1,686mg/dL(基準960~1,960)、IgA 255mg/dL(基準110~410)、IgM 70mg/dL(基準65~350)、AST 20U/L、ALT 12U/L、LD 177U/L(基準176~353)、尿素窒素11.1mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、尿酸6.9mg/dL、血糖98mg/dL、Na 139mEq/L、K 3.9mEq/L、Cl 104mEq/L。免疫血清学所見:CRP 1.3mg/dL、抗核抗体1,280倍(基準値20以下)、抗Scl-70抗体陽性。胸部CTで両側下葉に網状影を認める。皮膚硬化に対してプレドニゾロン30mg/日を投与した。1週後に血圧が180/100mmHgに上昇し、クレアチニン1.9mg/dL、尿酸9.0mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 106mEq/Lとなった。
現時点での治療法として最も適切なのはどれか。
利尿薬の投与
免疫抑制薬の投与
尿酸排泄促進薬の投与
副腎皮質ステロイドの増量
アンジオテンシン変換酵素〈ACE〉阻害薬の投与

解答: e

108D47の解説

抗Scl-70抗体陽性より、全身性硬化症〈SSc〉〈強皮症〉の診断。Raynaud現象、皮膚硬化、間質性肺炎の出現も矛盾しない。尿蛋白が陽性であり、強皮症腎を呈している。プレドニゾロン投与により血圧が180/100mmHgに上昇しているため、腎クリーゼ状況となっている。設問文の「現時点での」というのは、このクリーゼ状況に対する処置を求めていると思われる。
a 体内の水分貯留が原因ではない。
b 免疫抑制薬は間質性肺炎に有効。
c 腎機能低下時に尿酸排泄促進薬を投与すると、腎機能がさらに悪化しかねない。
d 副腎皮質ステロイドが本病態の原因となっており、さらなる増量は有害。
e 正しい。ACE阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬〈ARB〉の投与が有効。

正答率:70%

テーマ:強皮症腎の治療法[全身性硬化症〈SSc〉]

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