108A28

70歳の女性。左上腹部痛を主訴に来院した。昨夜、久しぶりに孫たちと遊んだり歌ったりして騒いだ。その3時間後から左上腹部に痛みを感じるようになった。診察室には前かがみの姿勢で入ってきた。食事摂取は良好であり、悪心や嘔吐はなく便通も正常である。3年前に脳梗塞を発症し、その後アスピリンを内服している。体温36.5℃。脈拍88/分、整。血圧140/90mmHg。左上腹部に限局した圧痛を認めるが、反跳痛はない。腹筋を緊張させると疼痛と圧痛とは増強する。腸雑音は正常である。
最も考えられるのはどれか。
急性膵炎
腹壁血腫
腸腰筋膿瘍
虚血性大腸炎
穿孔性胃潰瘍

解答: b

108A28の解説

アスピリン(抗血小板薬)を内服している高齢女性であり、血管壁に傷がついた場合、止血困難の状態にあったと考えられる。「孫たちと遊んだり歌ったりして騒いだ」とあり、腹壁に負荷がかかり、出血し、血腫を作った、というストーリー。
なお、検者が外部から圧をかけた状況下で「腹筋を緊張させると疼痛と圧痛とは増強する」というのはCarnett徴候陽性と呼ばれるもの。腹腔内の病変であれば、腹筋の緊張により検者の圧が和らぐため痛みは増強しない。増強した場合、腹壁病変が考えやすくなる。
a 「前かがみの姿勢」で軽快する点からは急性膵炎も考えられるが、腹膜刺激症状がないため否定的。
b 正しい。上記の通り。
c 腸腰筋膿瘍が存在するのであれば、発熱など感染徴候があるはずだ。
d 「便通も正常で」・「腸雑音は正常」とあり、虚血性大腸炎は否定的。
e 腹膜刺激症状がないため、穿孔性胃潰瘍は否定的。

正答率:74%

テーマ:腹壁血腫の診断

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