107D53

61歳の男性。健康診断時に胸部エックス線写真で異常を指摘され、精査のため来院した。3か月前から易疲労感、1か月前から右殿部痛を自覚していた。最近3か月で4kgの体重減少があった。既往歴に特記すべきことはない。身長170cm、体重62kg。体温36.2℃。脈拍88/分、整。血圧152/88mmHg。呼吸数15/分。SpO2 95%(room air)。右頸部と右鎖骨上とに径2cmのリンパ節をそれぞれ1個触知する。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部に異常を認めない。血液所見:赤血球360万、Hb 11.5g/dL、Ht 35%、白血球6,800、血小板29万。血液生化学所見:総ビリルビン0.5mg/dL、AST 33U/L、ALT 28U/L、LD 440U/L(基準176~353)、クレアチニン0.8mg/dL。CRP 1.0mg/dL。胸部エックス線写真(A)、肺野条件の胸部CT(B)及び胸部造影CT(C)を別に示す。気管支鏡による生検で肺腺癌と診断された。骨シンチグラムで右坐骨に集積を認めた。
治療として適切なのはどれか。2つ選べ
緩和ケア
免疫療法
肺葉切除術
抗癌化学療法
胸部放射線照射

解答: a,d

107D53の解説

気管支鏡による生検で肺腺癌と診断されている。画像Cでは胸骨後面に広がる腫瘤を指摘できる。画像A, Bでは肺内に多発する小腫瘤がみられ、肺内転移が考えやすい。骨シンチグラムで右坐骨に集積があるため、骨転移している状況(すなわちステージIV)である。
a 正しい。右殿部痛を自覚しているため、緩和ケアは有効。109B37-dにあるように、「終末期でないと緩和ケアの適応とならない」というわけではない。抗癌化学療法と併用する緩和ケアも存在しうるのだ。
b △。切除不能の肺癌に対しては免疫チェックポイント阻害薬(免疫療法の1つ)が用いられることがある。出題当時は誤りであったが、医学の進歩により今後は正解となりうる選択肢である。
c ステージIVは手術適応とならない。
d 正しい。抗癌化学療法には耐えうる状態と判断される。
e 骨転移を認めており、胸部のみに放射線を照射しても効果は乏しい。また、腺癌に放射線は有効ではない。

正答率:86%

テーマ:全身転移した肺腺癌の治療

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