107C30

次の文を読み、30、31の問いに答えよ。
48歳の男性。腹部膨満感、咳、腰痛および腹痛を主訴に来院した。
現病歴:2年前に胃癌で胃全摘術を受け、その後外来で約6か月間の抗癌化学療法を受け外来通院で経過観察となった。1年前に腫瘍マーカーの上昇と肝転移とを指摘され、再度抗癌化学療法を受けたが、食欲不振が高度となり、治療効果が認められず中止となった。4か月前から上腹部の膨満、咳および腰痛を自覚していた。画像診断で軽度の腹水貯留と肝、肺および腰椎への多発転移が認められた。利尿薬、鎮咳薬および非ステロイド性抗炎症薬の処方にて落ち着いていたが、3日前から新たに腹部の鈍痛が出現したため受診した。経口摂取は可能である。
既往歴:特記すべきことはない。
生活歴:喫煙歴はない。飲酒は日本酒1合/日を20年間。
家族歴:父親が肺癌のため70歳で死亡。
現 症:意識は清明。身長165cm、体重56kg。2年間で10kgの体重減少。体温36.2℃。脈拍84/分、整。血圧134/80mmHg。呼吸数18/分。SpO2 96%。眼球結膜に黄染を認めない。心音に異常を認めない。呼吸音は左背部で減弱している。腹部はやや膨隆しているが軟で、心窩部に圧痛がある。心窩部に肝を触知し、両下肢に軽度の浮腫を認める。
検査所見:血液所見:赤血球364万、Hb 10.3g/dL、Ht 32%、白血球6,400、血小板14万。血液生化学所見:血糖78mg/dL、総蛋白5.9g/dL、アルブミン2.4g/dL、尿素窒素10mg/dL、クレアチニン0.4mg/dL、尿酸4.9mg/dL、総コレステロール187mg/dL、トリグリセリド143mg/dL、総ビリルビン0.8mg/dL、AST 32U/L、ALT 18U/L、LD 387U/L(基準176~353)、ALP 644U/L(基準115~359)、γ-GTP 32U/L(基準8~50)、アミラーゼ124U/L(基準37~160)、Na 134mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 97mEq/L、Ca 6.5mg/dL。CEA 28.7ng/mL(基準5以下)、CA19-9 336U/mL(基準37以下)。CRP 3.4mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.32、PaCO2 38Torr、PaO2 94Torr、HCO3- 19mEq/L。
まず行うべき治療はどれか。
輸血
放射線治療
抗癌化学療法
モルヒネの経口投与
フェンタニルの持続静注

解答: d

107C30の解説

胃癌の全身転移症例。腹部膨満感は腹水、咳は肺転移、腰痛は腰椎転移、腹痛は肝転移で説明がつく。
a Hbは10g/dlを超えており、急いで輸血する必要はなさそうだ。
b 骨転移に対する疼痛緩和に放射線は有効だが、現時点でまず行うものではない。
c 前回の抗癌化学療法を中止した経緯もあり、再開は難しそうだ。
d 正しい。主訴は痛みである。非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉が効かない段階にきており、ターミナルケアの一環としてモルヒネを使用したい。
e フェンタニルもオピオイドの1つであるが、経口摂取可能とあるため、持続静注する必要はない。

正答率:89%

テーマ:【長文1/2】胃癌の多発転移で疼痛を訴える患者にまず行うべき治療

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