107C21

82歳の男性。呼吸困難のため搬入された。10年前に心筋梗塞を発症し、5年前に冠動脈バイパス術を受け、現在はアンジオテンシン変換酵素阻害薬とアスピリンとを服用中である。4泊5日の温泉旅行に行き3日前に帰ってきた。2日前からは身の回りのことで息切れを感じるようになり、昨晩、就寝後約2時間で突然呼吸困難、喘鳴および咳嗽が出現したため、救急車を要請した。意識は清明。脈拍112/分、不整。血圧142/88mmHg。呼吸数24/分。SpO2 95%(マスク4L/分酸素投与下)。頸静脈怒張を認める。III音を聴取し、全肺野に水泡音を聴取する。下腿に浮腫を認める。心電図で心房細動を認め心拍数は130/分である。前回検査時の心電図は洞調律で心拍数は64/分で、調律と心拍数の所見以外は変化はない。来院時の胸部エックス線写真を別に示す。
治療として適切でないのはどれか。
利尿薬の静注
ジゴキシンの静注
塩酸モルヒネの静注
アドレナリンの点滴静注
硝酸薬スプレーの舌下投与

解答: d

107C21の解説

10年前に心筋梗塞〈MI〉の既往があり、もともと心筋が弱っている背景があったようだ。高齢のうえ、4泊5日の温泉旅行でさらに負担をかけてしまったのが今回のエピソードの原因である。頸静脈怒張(→右心不全)、全肺野の水泡音(→肺水腫→左心不全)があり、両心不全である。画像では心拡大と胸水貯留、葉間胸水(Kerley line)を指摘できる。
a 肺水腫に対して利尿薬が有効。
b 心房細動に対してジゴキシンが有効。
c 呼吸困難感に対して塩酸モルヒネが有効。
d 誤り。血圧は142/88mmHgと高値であり、アドレナリンを投与する必要はない。
e うっ血性心不全や冠血流低下に硝酸薬が有効。

正答率:72%

テーマ:心房細動〈AF〉を認める急性心不全の治療

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