107G60

次の文を読み、60~62の問いに答えよ。
82歳の男性。意識消失のため搬入された。
現病歴:本日、ビールを飲みながら夕食をとった後、入浴のため食卓から立ち上がり歩き始めたところ、突然意識を消失し倒れた。驚いた妻が駆けつけ大声で呼びかけたところ、すぐに意識は清明となった。明らかな外傷やけいれんはなかったという。最近、椅子から立ち上がる時にふわっとすることがよくあったという。
既往歴:高血圧症のためカルシウム拮抗薬を内服している。1か月前から持病の腰痛症悪化のため非ステロイド性抗炎症薬を内服している。
生活歴:長男夫婦と同居。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
家族歴:特記すべきことはない。
現 症:意識は清明。体温36.8℃。脈拍88/分、整。血圧132/68mmHg。呼吸数18/分。SpO2 95%(room air)。瞳孔径は両側3mmで対光反射は正常である。眼瞼結膜はやや蒼白である。眼球結膜に黄染を認めない。口腔内に出血を認めない。舌と粘膜とに損傷を認めない。項部硬直を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。咽頭に腫脹と発赤とを認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腹部に圧痛を認めない。四肢に浮腫、チアノーゼ、ばち指および皮疹を認めない。
検査所見:心電図に異常を認めない。
意識消失の原因として最も考えられるのはどれか。
不整脈
てんかん
状況性失神
起立性低血圧
迷走神経反射

解答: d

107G60の解説

高齢男性の意識消失。AIUEO TIPSといった有名な覚え方があることからも分かるように、意識障害の原因は非常に多岐に渡るため鑑別に困難を極める。丁寧に病歴を聴取したい。
本患者は高血圧のためカルシウム拮抗薬を服用している、とのことで起立性低血圧が最も考えやすいが、1か月前から非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉の服用もしており、これによる潰瘍出血で貧血を呈している可能性も念頭に置く必要がある。事実、「眼瞼結膜はやや蒼白」という記載もあり、貧血の可能性は否定できない。
a 不整脈による失神ではあまりに急激なため、外傷をみることが多い。また、脳虚血によるけいれんも合併しやすい。
b てんかんの既往歴がなく、けいれんもみられていないことから否定的。
c 状況性失神とは、排尿・排便や咳嗽といった特定の状況下で起こる失神を指す。本症例は「立ち上がる時に」と、たしかに特定の状況下ではあるものの、その場合はdの起立低低血圧と呼ぶほうがふさわしい。
d 正しい。降圧薬によりもともと血圧が降下しやすい背景があり、それに飲酒が加わり、起立性低血圧をきたした可能性が高い。上記のように貧血による失神も考えうるが、選択肢にない。
e 血管迷走神経反射〈VVR〉は若年者に多く、起立状態を維持したような状況でみられる。

正答率:94%

テーマ:【長文1/3】起立性低血圧による意識消失の診断

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