106D52

64歳の男性。腰痛と頻尿とを主訴に来院した。1か月前から腰痛が出現し、自宅近くの診療所で鎮痛薬とコルセットとを処方されたが、次第に増悪してきた。3日前から疼痛で歩行が困難になったため受診した。既往歴と家族歴とに特記すべきことはない。身長169cm、体重69kg。体温36.2℃。脈拍68/分、整。血圧148/84mmHg。呼吸数14/分。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。直腸指診で小鶏卵大、石様硬の前立腺を触知する。腰椎部に叩打痛を認める。尿所見:蛋白(-)、糖(-)、沈渣に赤血球と白血球とを認めない。血液所見:赤血球480万、Hb 15.0g/dL、Ht 45%、白血球6,800、血小板24万。血清PSA 320ng/mL(基準4.0以下)。前立腺生検で低分化型の前立腺癌を認める。腹部造影CTで所属リンパ節の腫大を認める。骨シンチグラムを別に示す。
治療として適切なのはどれか。2つ選べ
抗癌化学療法
前立腺全摘除術
密封小線源療法
オピオイドの投与
抗男性ホルモン療法

解答: d,e

106D52の解説

骨シンチグラムでは、脊椎と肋骨、肩関節に異常集積を認め、前立腺癌の骨転移があると考えられる。
a 前立腺癌の薬物療法の基本はLHRHアゴニストやエストロゲン薬などのホルモン剤である。これらによる治療でPSA値が低下しているにもかかわらず、病勢の悪化が見られる場合を去勢抵抗性前立腺癌といい、この場合にのみ抗癌剤(ドセタキセル)が用いられる。
b・c 前立腺癌で浸潤がない場合に行われる。骨転移がある場合は適応はない。
d 正しい。本症例では骨転移による疼痛がプロブレムとして挙げられる。すでに診療所での鎮痛剤は内服しているが効果がないため、積極的にオピオイドの投与を考える。薬物療法で病勢の改善がみられれば適宜処方を見直す。
e 正しい。抗アンドロゲン薬のことである。浸潤した前立腺癌でホルモン療法は第一選択である。

正答率:66%

テーマ:腰椎転移した前立腺癌の治療

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