106A30

62歳の女性。腹痛と血便とを主訴に来院した。以前から時々便秘をする以外は自覚症状はなかったが、昨夜突然、左下腹部痛が出現し、直後に血便を認めた。腹痛は、排便後一時的に軽減したが今朝から増強し、悪心を伴うようになった。2時間前に再度血便を認めたため受診した。10年前から自宅近くの診療所で高血圧症に対する治療を受けている。意識は清明。身長153cm、体重54kg。体温37.2℃。脈拍88/分、整。血圧120/84mmHg。呼吸数14/分。SpO2 98%(room air)。腹部は平坦で、左下腹部に圧痛を認めるが、Blumberg徴候と筋性防御とを認めない。腸雑音は低下し、金属音を聴取しない。血液所見:赤血球350万、Hb 11.0g/dL、Ht 43%、白血球9,200、血小板38万。血液生化学所見:尿素窒素19mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL。CRP 5.0mg/dL。立位と臥位の腹部エックス線写真(A、B)を別に示す。
入院後の対応として適切なのはどれか。
イレウス管による減圧術
開腹手術
カテーテル塞栓術
大腸内視鏡による減圧術
保存的治療

解答: e

106A30の解説

腹痛と血便を主訴に来院した62歳女性。高血圧の既往があり、急性発症の左下腹部痛及び鮮血便から虚血性腸炎を疑う。腹部エックス線A, Bでは左側腹部の腸管ガス像が減弱しているが、二ボーやfree airは認めず、腸閉塞や穿孔は考えにくい。
a 立位腹部エックス線で明らかなニボー〈niveau〉を認めず、腸閉塞は否定的である。ゆえにイレウス管は不要である。
b 手術適応はない。
c 本疾患は粘膜下の細血管が破綻する病態であるため、出血量はそれほど多くはならない。本症例でもHb値は10g/dLを保っている。ゆえにカテーテル塞栓術は適応とならない。
d 腸管の捻転や腫瘍の存在による閉塞のケースでは減圧も考慮される。本疾患の主病態は虚血であるため無効である。
e 正しい。絶食と補液による保存的加療が適切である。
※後、111A31で再度出題されることとなる。

正答率:77%

テーマ:虚血性大腸炎への対応

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