105I58

3歳の男児。顔色不良と発熱とを主訴に来院した。母親は1か月前から顔色不良に気付いていた。1週前から発熱し、自宅近くの診療所で抗菌薬を投与されていたが、症状が改善しないため紹介されて受診した。体温38.3℃。脈拍120/分、整。呼吸数24/分。皮膚は蒼白で、下肢に点状出血を認める。眼瞼結膜に貧血を認める。眼球結膜に黄染を認めない。心尖部に2/6度の収縮期雑音を聴取する。右肋骨弓下に肝を3cm、左肋骨弓下に脾を4cm触知する。血液所見:赤血球196万、Hb 5.8g/dL、Ht 18%、網赤血球0.3%、白血球5,600(桿状核好中球1%、分葉核好中球6%、好酸球1%、単球2%、リンパ球86%、異常細胞4%)、血小板1.9万。血液生化学所見:尿素窒素11mg/dL、クレアチニン0.3mg/dL、尿酸6.2mg/dL、AST 72U/L、ALT 58U/L、LD 691U/L(基準335~666)。CRP 1.3mg/dL。骨髄検査を行ったところ、骨髄で増加している細胞はペルオキシダーゼ染色陰性で、表面マーカー検査ではB前駆細胞の形質を示す。骨髄染色体所見は51、XY、+4、+6、+10、+17、+21である。脳脊髄液検査に異常を認めない。骨髄血塗抹May-Giemsa染色標本を別に示す。
この疾患の治療について誤っているのはどれか。
多剤併用抗癌化学療法を行う。
副腎皮質ステロイドが有効である。
最も多い治療関連合併症は感染症である。
中枢神経予防療法は必須である。
約半数の症例が造血幹細胞移植の適応となる。

解答: e

105I58の解説

3歳男児の感冒症状。抗菌薬が無効であり、出血傾向や肝脾腫が存在することが感染症としては非定型的。白血球中に異常細胞が出現しており、血小板減少がある。また骨髄増殖細胞がペルオキシダーゼ染色陰性で、表面マーカー検査ではB前駆細胞の形質を示すことから急性リンパ性白血病〈ALL〉が考えやすい。画像では単一リンパ芽球の増生がみられる(白血病裂孔陽性)。
a 多剤併用抗癌化学療法が有効。
b 副腎皮質ステロイドも用いられる。
c a・bにより易感染性となるため、感染症を呈しやすい。
d 中枢神経浸潤をきたしやすいため、その予防が重要である。
e 誤り。本症例の表面マーカー検査ではB前駆細胞の形質(T細胞型より予後が良い)を示し、かつみられている染色体本数が51本(44本以下〔hypodiploid呼ばれる〕より予後が良い)である。ゆえにリスクとしてはそこまで高くなく、造血幹細胞移植の適応となる可能性は低い。具体的なパーセンテージを明言するのは難しいが、「約半数の症例」までは行くことはない。

正答率:68%

テーマ:急性リンパ性白血病〈ALL〉について

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