105D44

67歳の女性。3か月前からの腹部膨満感を主訴に来院した。脈拍76/分、整。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部はやや膨隆し、右肋骨弓下に肝を3cm、左肋骨弓下に脾を5cm触知する。血液所見:赤血球360万、Hb 10.5g/dL、Ht 32%、白血球18,700(骨髄芽球1%、好中球58%、好酸球5%、好塩基球1%、単球5%、リンパ球30%、赤芽球4個/100白血球)、血小板65万。末梢血塗抹標本で巨大血小板を認め、骨髄穿刺はdry tapであった。骨髄の生検組織のH-E染色標本(A)と鍍銀染色標本(B)とを別に示す。
適切な対応はどれか。
自家骨髄移植
抗癌化学療法
無治療で経過観察
エリスロポエチン投与
副腎皮質ステロイド投与

解答: c

105D44の解説

高齢女性の腹部膨満感。肝を3cm、脾を5cm触知していることが腹部膨満感の原因であろう。白血球中に骨髄芽球と赤芽球とを認めており、白赤芽球症〈leuko-erythroblastosis〉である。末梢血塗抹標本で巨大血小板を認め、骨髄穿刺はdry tapであること、画像にて巨核球の増生と骨髄の線維化を認めることから原発性骨髄線維症〈PMF〉の診断となる。PMFの予後予測モデルにはLille分類(1996年)とIPSS(2009年)とがある。
a PMFの治療として一般的ではない。
b △。IPSSによれば中間2リスクであり、ハイドロキシウレアや蛋白同化ステロイド、副腎皮質ステロイドが投与される。
c 正しい。Lille分類によれば低リスクであり、経過観察が正解となる。
d 貧血は軽度であり、腎障害がメインであるわけでもない。ゆえに不要。
e △。bに示したように、用いられる可能性はある。副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)投与は「化学療法」に含まれることもあり、bと類似概念であることが分かればセットで切ることができよう。
※105回医師国家試験は2011年に施行された。作問は2010年になされたと考えられ、IPSS(2009年)が新しすぎた可能性が高い。ゆえに出題者はLille分類(1996年)をもとに作問したのであろう。IPSSに基づけばbもeも正答になりうる。
※「ではLille分類(1996年)とIPSS(2009年)、どちらで覚えたらよいのか?」といった質問をよくいただくのだが、本稿執筆者はどちらも覚えていない(血液内科専門医であっても暗唱レベルでスラスラ言える者は多くないはずだ)。そもそも本問の正答率は半数を切っており、得点できる必要はない。再度全く同じ問題が出題されたのであれば「なんとなく経過観察」を選べる学生は多いと予想されるが、少しでも改題されてしまったら再び合否を分けない難問となるであろう。こうした枝葉末節の問題に拘泥している時間があったらその分、他の頻出事項を1つでも多く覚えよう。

正答率:53%

テーマ:原発性骨髄線維症〈PMF〉の治療

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