105D45

64歳の男性。浮腫と全身倦怠感とを主訴に来院した。10年前に健康診断で血糖高値と血圧高値とを指摘されたが受診しなかった。半年前から夜間排尿回数の増加を自覚していた。1か月前から浮腫と全身倦怠感とが出現し、次第に増悪するために受診した。飲酒は日本酒1合/日を40年間。喫煙は15本/日を40年間。身長168cm、体重74kg。体温36.0℃。呼吸数16/分。脈拍80/分、整。血圧166/100mmHg。眼瞼結膜に貧血を認める。心尖部に2/6度の収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は軽度に膨隆し、圧痛を認めない。肝・脾を触知しない。前脛骨部に浮腫を中等度認める。尿検査:蛋白3+、糖1+、潜血1+。血液所見:赤血球280万、Hb 8.2g/dL、Ht 22%、白血球5,000、血小板20万。血液生化学所見:空腹時血糖146 mg/dL、HbA1c 6.8%(基準4.3~5.8)、総蛋白5.8 g/dL、アルブミン3.0 g/dL、尿素窒素30mg/dL、クレアチニン2.2mg/dL、尿酸8.2 mg/dL、Na 140mEq/L、K 6.0mEq/L、Cl 114mEq/L。胸部エックス線写真で心胸郭比56%であり、心電図で左室肥大を認める。
治療として適切でないのはどれか。
インスリン皮下注射
アルブミン点滴静注
エリスロポエチン皮下注射
カルシウム拮抗薬経口投与
重炭酸ナトリウム経口投与

解答: b

105D45の解説

10年前から血糖高値と血圧高値のある高齢男性の浮腫と全身倦怠感である。尿蛋白3+、アルブミン3.0 g/dlであるためネフローゼ症候群であり、クレアチニン2.2mg/dl、年齢、性別からは慢性腎不全が考えられる。尿量増加などの症状や尿糖1+、空腹時血糖146mg/dl、HbA1c 6.8%であることから糖尿病であり、糖尿病性腎症の診断となる。眼瞼結膜は蒼白であり聴診で心尖部に2/6度の収縮期雑音を聴取することから腎性貧血による代償で心機能が亢進があり、胸部エックス線写真では心拡大を、心電図で左室肥大を認めることから心不全の合併も疑われ、緊急での対応が必要である。
a 糖尿病の診断基準を満たしており、治療するべきである。
b 誤り。慢性腎不全に対するアルブミン投与は対症療法に過ぎず、また心不全合併下においては循環血液量増加により悪化させてしまう可能性もある。
c 赤血球280万、Hb 8.2g/dl、Ht 22%と貧血があり、腎機能低下によるエリスロポエチン分泌低下を補正する必要がある。
d 166/100mmHgとⅡ度高血圧であり、腎不全改善のためにも血圧コントロールは必要である。
e K 6.0mEq/lのアシドーシスに対し重炭酸ナトリウム経口投与とすべきかは難しいところであるが、優先度としてはbに勝る。いずれにしても、塩分制限は必要である。

正答率:57%

テーマ:糖尿病性腎症の患者への対応

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