104A36

80歳の女性。腹痛を主訴に来院した。本日0時ころから右側腹部痛が出現した。9時ころ自宅近くの診療所で抗コリン薬と非ステロイド性抗炎症薬とを投与されたが、腹痛は改善しなかった。午後から発熱が出現したため、15時ころに来院した。数か月前から尿混濁に気付いていたが、排尿に異常はなく、尿失禁は認めなかった。50歳時に子宮頸癌で子宮全摘術の既往がある。意識レベルはJCS I-2。体温38.0 ℃。脈拍80/分、整。血圧158/78 mmHg。心尖部に2/6度の収縮期雑音を認める。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦で、右側腹部に軽度の圧痛を認める。筋緊張と反跳痛とは認めない。右肋骨脊柱角に叩打痛を認める。尿所見:蛋白2+、糖(-)、細菌1+、潜血3+、沈渣に赤血球100以上/1視野、白血球100以上/1視野。血液所見:赤血球337万、Hb 10.7 g/dL、Ht 32 %、白血球15,000(桿状核好中球7%、分葉核好中球88%、好酸球0 %、好塩基球0 %、単球1 %、リンパ球4 %)、血小板18万。血液生化学所見:血糖185 mg/dL、アルブミン3.4 g/dL、尿素窒素20 mg/dL、クレアチニン1.1 mg/dL、Na 135 mEq/L、K 3.9 mEq/L、Cl 103 mEq/L。CRP 6.9 mg/dL。腹部造影CTを別に示す。
考えられるのはどれか。
骨盤腹膜炎
急性膀胱炎
急性腎盂腎炎
汎発性腹膜炎
無症候性細菌尿

解答: c

104A36の解説

抗コリン薬、収縮期雑音、子宮全摘既往など本質的には関係がないひっかけの単語(?)が散りばめられているが、必要な情報を抽出していくことが重要。側腹部痛やCVA叩打痛、尿混濁、発熱を認め、尿所見からも典型的な急性腎盂腎炎である。
a 淋菌やクラミジアが原因となる性感染症が骨盤内に波及したときに生じることが多い。卵管炎や子宮内膜炎で卵管采を通じて腹腔内へ炎症を起こすが、本症例は高齢女性であり子宮全摘後であることからも考えにくい。
b 尿混濁は膀胱炎でも生じるが、CVA叩打痛は来さず発熱も認めない。
c 正しい。画像では、典型的な楔状の造影不良領域を認める。炎症による浮腫や循環不全に伴うと考えられている。
d 腹膜全体に広がった腹膜炎のことであるが、尿所見やCVA叩打痛は認めない。腹膜刺激症状として筋緊張や反跳痛を認めるはずである。
e 尿路感染を示唆する所見がないにもかかわらず細菌尿もしくは尿培養陽性となる状態をさす。

正答率:97%

テーマ:急性腎盂腎炎の診断

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