103I79

80歳の男性。右眼の視力低下を主訴に来院した。約2年前から縦の線がうねって見えることに気付いていた。3か月前に急激な視力低下をきたし、硝子体出血の治療を近医で受けたが改善しなかった。5年前から糖尿病と高血圧とを指摘され治療を受けており、1年前から不整脈が発生し抗血小板療法を受けている。視力:右手動弁/30 cm(矯正不能)、左0.8(矯正不能)。前眼部、中間透光体所見:両眼に軽度の白内障を認めたが、角膜、前房および隅角には異常を認めなかった。右眼の硝子体に強い混濁を認めた。血液所見:赤血球350万、Hb 11.0g/dL、Ht 33%、白血球4,230、血小板13万。血液生化学所見:血糖145mg/dL、HbA1c 7.2%、総蛋白6.3g/dL、アルブミン4.0g/dL、尿素窒素20mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、Na 142mEq/L、K 4.7mEq/L、Cl 107mEq/L。右眼の硝子体切除術を施行した。混濁した硝子体を除去すると網膜下にも出血があり、出血は黄斑部を含んで下方に広がっていた。手術後3日の右眼(手術眼)の眼底写真(A)と左眼の眼底写真(B)とを別に示す。
硝子体出血の原因として最も考えられるのはどれか。
脳動脈瘤
加齢黄斑変性
糖尿病網膜症
高血圧性網膜症
薬剤性血小板減少症

解答: b

103I79の解説

「約2年前から縦の線がうねって見えることに気付いていた」という記載は歪視の所見である。その後、硝子体出血および網膜下出血が発生し視力低下をきたした、という症例。歪視が重要所見である加齢黄斑変性症では、進行すると新生血管が生じる。新生血管は正式な血管ではないので、容易に出血する。
a 脳に動脈瘤があっても硝子体出血はきたさない。網膜の動脈瘤や糖尿病性の毛細血管瘤が破綻すれば硝子体出血となる。
b 正しい。2年間放置した結果、新生血管が破綻し硝子体出血となって現れたと考えられる。
c 糖尿症網膜症であれば両側性に症状がみられやすい。
d 高血圧性の変化としては狭細化や口径不同を認め、進行すれば虚血となり硝子体出血をきたすこともあるが、c同様本症例では高血圧の治療はされており、そこまで進行しているとは考えにくい。
e 確かに正常よりも血小板は少なめであるが、この値単独で硝子体出血を起こすことは考えにくい。

正答率:57%

テーマ:加齢黄斑変性症〈AMD〉の診断

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