103D32

56歳の男性。筋力低下と空咳とを主訴に来院した。半年前から階段やバスのステップの昇降が困難になり、最近、空咳が出現した。半年間で体重が5kg減少した。身長174cm、体重58kg。体温37.5℃。血圧140/72mmHg。両側上眼瞼に紫紅色の浮腫を認め、両肺下部にfine cracklesを聴取する。徒手筋力テストで上腕二頭筋、上腕三頭筋、腸腰筋および大腿四頭筋は両側とも4/5。尿所見:蛋白(-)、糖1+。便潜血1+。赤沈56mm/1時間。血液生化学所見:AST 398U/L、ALT 120U/L、LD 1,275U/L(基準176~353)、CK 5,700U/L(基準40~200)。免疫学所見:CRP 2.2mg/dL、抗核抗体320倍(基準20以下)。
対応として適切でないのはどれか。
上部消化管内視鏡検査
ブドウ糖負荷試験
胸部単純CT
筋生検
肝生検

解答: e

103D32の解説

中年男性の筋力低下。この段階では神経内科的疾患も鑑別に挙がるのだが、「空咳」と主訴にあるため分野が絞られてくる。間質性肺炎を合併する筋力低下は膠原病、もっと言えば多発性筋炎・皮膚筋炎〈PM/DM〉を思い浮かべるべきである。両側上眼瞼に紫紅色の浮腫を認めているのはヘリオトロープ疹である。皮膚症状があるため、皮膚筋炎〈DM〉と考えられる。
a 半年間で体重が5kg減少しており、便潜血1+であることから消化管癌の存在を疑う。上部消化管内視鏡検査を行いたい。DMはデルマドロームとして有名。
b 尿糖1+であり、糖尿病の存在が疑われる。今後副腎皮質ステロイド治療を行っていくことが予想されるため、耐糖能についてブドウ糖負荷試験で評価しておこう。
c 胸部単純CTにて間質性肺炎を精査する。
d 筋生検にて筋内へのリンパ球浸潤を証明する。
e 誤り。ASTが上昇しているのは筋崩壊によるためで、肝障害によるためではない。肝生検は不要だ。なおALTも上昇しているが、膠原病では発熱が存在するなど非特異的に肝障害がみられることがある(が生検しても有益な情報は得られない)。

正答率:61%

テーマ:皮膚筋炎〈DM〉への対応

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし