102D58

64歳の男性。人間ドックでPSA値の異常を指摘され来院した。既往歴と家族歴とに特記すべきことはない。身長164cm、体重63kg。体温36.3℃。脈拍72/分、整。血圧138/78mmHg。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知せず、圧痛や抵抗を認めない。下肢に浮腫を認めない。直腸診でクルミ大の前立腺を触知するが、硬結は認めない。尿所見:蛋白(-)、糖(-)、沈渣に赤血球と白血球とを認めない。血液所見:赤血球460万、Hb 15.1g/dL、Ht 45%、白血球6,300、血小板26万。PSA 7.3ng/mL(基準4.0以下)。前立腺生検で中分化型の前立腺癌を認める。腹部造影CTでリンパ節腫大を認めない。骨シンチグラフィで異常集積を認めない。患者は治療を希望している。
治療法として適切なのはどれか。2つ選べ
温熱療法
放射線治療
抗癌化学療法
前立腺全摘除術
経尿道的前立腺切除術

解答: b,d

102D58の解説

PSAの高値と生検結果から前立腺癌の診断はつくが、直腸診では硬結や腫大を認めず転移もないので前立腺に限局した早期の前立腺癌と考えられる。
a 腫瘍内の温度を42℃ほどに上昇させることで癌を縮小させるという治療法である。治療として行っている医療機関はないわけではないが、はっきりとしたエビデンスはなく標準治療ではない。
b・d 正しい。前立腺内に限局した癌は、根治的前立腺全摘除術や放射線治療を行う。放射線治療では、密封小線源を用いた内照射と強度変調放射線を用いた外照射がある。いずれもよく行われる方法である。
c 前立腺癌の薬物療法の基本はLHRHアゴニストやエストロゲン薬などのホルモン剤である。これらによる治療でPSA値が低下しているにもかかわらず、病勢の悪化が見られる場合を去勢抵抗性前立腺癌といい、この場合にのみ抗癌剤(ドセタキセル)が用いられる。
e 難治の前立腺肥大症に対する術式である。前立腺癌には行われない。

正答率:68%

テーマ:前立腺癌の治療

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