102A54

65歳の男性。右前胸部の疼痛を主訴に来院した。2か月前から乾性咳嗽と労作時の呼吸困難とが出現し、徐々に増悪した。16歳から60歳まで自動車整備工をしていた。喫煙は20本/日を45年間。意識は清明。身長168cm、体重54kg。体温37.0℃。脈拍76/分、整。血圧130/90mmHg。胸部右側の呼吸音の減弱を認める。血液所見:赤血球429万、Hb 14.6g/dL、Ht 45%、白血球4,100、血小板20万。血液生化学所見:総蛋白7.5g/dL、アルブミン3.5g/dL、AST 22U/L、ALT 9U/L、LD 128U/L(基準176~353)。CRP 0.2mg/dL。穿刺排液した胸水は黄色混濁で、比重1.019。蛋白5.2g/dL、LD 151U/L、アデノシンデアミナーゼ45.0U/L(基準50以下)、ヒアルロン酸高値。一般細菌および抗酸菌培養は陰性で、結核菌のPCR検査も陰性であった。胸部単純CT(A)を別に示す。確定診断のため、胸腔鏡下で壁側胸膜上の結節を生検した。生検組織のH-E染色標本(B)とカルレチニン免疫組織染色標本(C)とを別に示す。CEAによる免疫組織染色は陰性であった。
診断はどれか。
膿胸
乳び胸
胸膜中皮腫
癌性胸膜炎
結核性胸膜炎

解答: c

102A54の解説

右前胸部の疼痛を主訴とする65歳男性。自動車整備工で長年の勤務歴を有する。また喫煙歴もある。胸部単純CT(A)では胸膜肥厚像と胸膜腫瘤像を認める。生検組織のH-E染色標本(B)では紡錘形の異型細胞が増殖している。カルレチニン免疫組織染色標本(C)ではカルレチニンが陽性であることから胸膜中皮腫の診断となる。胸水中のヒアルロン酸が高値であることは胸膜中皮腫の所見として矛盾しない。
a 膿胸では穿刺排液した胸水で一般細菌培養が陽性となる。
b 乳び胸では穿刺排液した胸水は牛乳様の外観であるはず。
c 正しい。上述の通り。
d CEAによる免疫組織染色は陰性であることから、腺癌の癌性胸膜炎は考えにくい。
e 胸水のアデノシンデアミナーデ〈ADA〉は正常値であること、結核菌のPCR検査も陰性であることから否定的。

正答率:95%

テーマ:胸膜中皮腫の診断

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