102D46

54歳の男性。倦怠感を主訴に来院した。2年前から冬季になると体調不良を自覚していた。今年の冬は1か月前から今までになく倦怠感が強くなった。同時期から、時々指尖が冷たく、痛くなった。生来健康で喫煙歴はない。意識は清明。体温37.3℃。脈拍96/分、整。血圧114/58mmHg。皮膚に発疹はない。心音と呼吸音とに異常を認めない。左肋骨弓下に脾の先端を触れる。尿潜血1+。血液所見:赤血球252万、Hb 7.9g/dL、Ht 24%、網赤血球4.8%、白血球6,700、血小板34万。血液生化学所見:総蛋白8.0g/dL、アルブミン4.7g/dL、尿素窒素14.0mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、尿酸7.2mg/dL、総コレステロール220mg/dL、トリグリセライド154mg/dL、総ビリルビン3.2mg/dL、直接ビリルビン0.8mg/dL、AST 35U/L、ALT 35U/L、LD 770U/L(基準176~353)、ALP 220U/L(基準260以下)、Fe 230μg/dL。免疫学所見:CRP 0.3mg/dL、抗核抗体陰性。末梢血塗抹Wright-Giemsa染色標本を別に示す。
この患者にみられる検査所見はどれか。
(編注:厳密には正答は2つと考えられるが、出題者の意図を考え、最も適切な1つを選ぶこと)
TSH高値
M蛋白陽性
抗dsDNA抗体陽性
赤血球浸透圧抵抗減弱
直接Coombs試験陽性

解答: e

102D46の解説

中年男性の冬季に顕著となる倦怠感。指先の症状はRaynaud現象とも考えられるが、異なるかもしれない。正球性貧血で網赤血球が増加していることから溶血性疾患を考えよう。画像では凝集した赤血球が指摘可能。
a TSH高値は甲状腺機能低下(貧血あり)症などでみられる。
b M蛋白陽性は多発性骨髄腫〈MM〉(貧血あり)などでみられる。
c 抗dsDNA抗体陽性は全身性エリテマトーデス〈SLE〉(貧血あり)でみられる。SLEであれば汎血球減少となる。
d 赤血球浸透圧抵抗減弱は遺伝性球状赤血球症〈HS〉でみられる。生来健康で家族歴がないことからHSは否定的。
e 正しい。直接Coombs試験陽性となる自己免疫性溶血性貧血〈AIHA〉が考えやすい。
※冬季に顕著となっており、冷式AIHAと考えられる。が、冷式では血管内溶血をみるケースが多く、脾腫の説明がつかない。
※AIHAでも小球状赤血球をみることがあり、そう考えるとdも正解となりうる。たしかに画像上も一部球状赤血球がみえる。
※冷式AIHAの過去問での出題数が極めて少ないので、102回と古い問題ではあるが随所で未だ現役な問題だ。だが、上記のように詰めの甘い問題である感が拭えない。そのギャップからか、学生から質問をいただくことの多い問題だ。すべてを完全に説明することができないのは気分が悪いものだ。だが、不条理も世の中には存在する。清濁併せ呑む境地で軽く流そう。

正答率:79%

テーマ:冷式自己免疫性溶血性貧血〈AIHA〉の検査所見

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