101H30

73歳の女性。強い背部痛を主訴に来院した。背部痛は自宅で軽くしりもちをついたときに出現した。腹部の疼痛はなく、下肢の動脈拍動に異常はない。胸腰椎移行部に強い叩打痛がある。血清生化学所見:ALP 280U/L(基準260以下)、アミラーゼ150U/L(基準37~160)、Ca 9.1mg/dL、P 3.5mg/dL。CRP 0.5mg/dL。
考えられるのはどれか。2つ選べ
胸部大動脈解離
急性膵炎
化膿性脊椎炎
転移性脊椎腫瘍
脊椎圧迫骨折

解答: d,e

101H30の解説

a 胸部大動脈解離でも背部痛や胸痛を主訴とすることはあるが、本症例では転倒というはっきりしたきっかけがあり、叩打痛も認める。さらに下肢の動脈拍動に左右差もなく、大動脈解離を積極的に疑う所見はない。
b 背部痛、腹痛の鑑別として膵炎は上げるべき疾患の1つである。しかし、本症例ではアミラーゼは正常範囲内であり炎症反応も認めず、急性膵炎は考えにくい。急性膵炎の場合、アミラーゼは5-10倍ほど高値となる。
c 発熱や炎症反応の高値を認めず、考えにくい。
d・e 正しい。現時点では転移性脊椎腫瘍か脊椎圧迫骨折の2つが可能性の高い疾患であろう。ALP高値が転移性脊椎腫瘍を疑わせ、転倒を契機に発症していることが脊椎圧迫骨折を疑わせる。なお、転移性脊椎腫瘍による骨溶解で脆弱化した脊椎が転倒を契機に圧迫骨折を起こしたというケースも十分に考えられるだろう。

正答率:87%

テーマ:転移性脊椎腫瘍による脊椎圧迫骨折の診断

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