101D9

73歳の男性。歩行障害のため搬入された。半年前に大腸癌と胸椎への転移とを指摘され、大腸の手術を受けた。最近は背部痛があるが、鎮痛薬を服用して元気にしていた。2週前から両側下肢に力が入らず、今朝から歩行できなくなった。
身体診察で注意するのはどれか。
下肢の浮腫
Kernig徴候
Babinski徴候
下肢の協調運動障害
足背動脈と後脛骨動脈との脈拍消失

解答: c

101D9の解説

運動麻痺はその種類によって障害レベルが異なる。大きくは痙性麻痺と弛緩性麻痺に分けられ、前者は上位ニューロンの障害、後者は下位ニューロンの障害で生じる。本症例の場合、大腸癌の胸椎への転移があるため、本エピソードの運動麻痺が癌の脊髄転移によるものかどうかをはっきりさせる必要があるだろう。両下肢に力が入らないということから対麻痺であることが分かるので、痙性麻痺であれば脊髄転移の可能性が非常に高い。
a 麻痺が進むと循環障害から浮腫が生じることがあるが、本症例は「今朝から」急性発症なので浮腫は認めないだろう。
b 髄膜刺激症状の1つである。坐骨神経の牽引によって、髄膜に炎症があった場合に痛みとして反映される。髄膜炎や脳炎であれば他に全身症状がみられるはずであり、クモ膜下出血(髄膜刺激症状は陽性となる)であれば意識障害を認めるはずである。
c 正しい。上位ニューロンが抑制されるとBabinski徴候やその他深部腱反射の亢進などの錐体路徴候を認める。脊髄転移は上位ニューロンの障害であるのでBabinski徴候は陽性になると考えられる。逆に、本症例で錐体路徴候を認めなかった場合、他の原因も考えねばならないだろう。
d 小脳や内耳の障害で起こると考えられるが、そもそも下肢に力が入らないので所見を取ることができない。
e 下肢動脈閉塞などの循環障害による麻痺を考えた場合注意すべきである。しかし、症状は徐々に進行するものであり本症例のように突発的に起こるものではないため合致しない。

正答率:69%

テーマ:胸椎転移した大腸癌患者の身体診察で注意すること

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