100I20

11歳の男児。学校で運動中、左側腹部を強く打撲し救急車で搬入された。意識は清明。体温35.7℃。脈拍100/分、整。血圧80/58mmHg。心雑音はない。呼吸音に異常を認めない。皮下気腫はない。腹部は平坦。腸雑音は弱い。左側腹部に圧痛を伴う腎を触知する。尿所見:肉眼的血尿、蛋白2+、糖(-)、沈渣に赤血球無数/1視野、白血球2~3/1視野。血液所見:赤血球210万、Hb 6.5g/dL、Ht 21%、白血球9,500、血小板18万。腹部造影CTを別に示す。直ちに乳酸加リンゲル液を輸液し、赤血球濃厚液1,000mlの輸血を行ったが、血圧は安定しなかった。
次に行うのはどれか。
止血薬投与
左腎動脈塞栓術
左尿管ステント留置
左腎瘻カテーテル挿入
左腎摘除

解答: b

100I20の解説

左側腹部の外傷であり、腎損傷の他にも肺挫傷や肝・脾損傷、腸穿孔など考えるべきことは様々であるが、本症例ではまず腎損傷の対処が必要であると考えられる。造影CTでは左腎の背部に大量の血腫を認めており、輸血で血圧が安定しないことからも活動性の出血が続いていると考えられる。バイタルからも、収縮期血圧の低下と頻脈を認めショック状態に近づいていることが分かる(11歳の小児の正常脈拍は80/分、正常収縮期血圧は110程度である)。
a 大動静脈からの出血があれば止血剤だけでは十分な効果は期待できない。
b 正しい。輸血に反応しない低血圧があり、動脈からの活動性の出血があると考えられる。直ちに止血を行う必要があり破綻した動脈を選択的に塞栓することで残りの腎機能温存を期待できる。
c 尿管の通過障害に対して行われる。
d 尿管ステント挿入が難しい場合は腎瘻が選択される。
e 代償できない臓器なので可能な限り腎機能は残しておきたい。不可逆的な損傷や部分切除が不可能な腫瘍であれば腎摘除は行われるが、本症例では不適切である。

正答率:78%

テーマ:腎損傷の治療

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